これはやや分かりにくい結果であるが、衆院解散の少なくとも1つの(タテマエ上の)理由とされている消費再増税に関する自公両党の立場に対して、他の代替案が何であれ、「とりあえず反対」という態度を有権者が示したとも言えなくはない。

 原発再稼働も、有権者の意識の上では、今回の選挙における重要な争点であったようだ。自民党、公明党、次世代の党は、「安全基準に合格すれば認める」という立場であるが、それに対して、「再稼働を認めない」(生活、社民、共産)、「責任ある逃避計画など厳しい条件で容認」(民主、維新)という立場は、多くの有権者の共感を得たようである。選挙前の報道の内容とは裏腹に、有権者にとっては依然として原発をめぐる問題が重要であることを、この分析結果は示している。

 それ以外に、自民党の政策に比べより多くの支持を得た政策は、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略に関する、民主党、生活の党、社民党、共産党による「雇用政策や子育て支援などによる所得増で消費拡大」という政策である。自民党の「農業・医療など岩盤規制を打破」よりも、3%ほど政党支持を高めることに貢献している。

 なお、公明党は「地方産業・中小企業の活性化による成長実現」を訴えたが、自民党の政策以上に支持を得ることはなかった。成長戦略は多岐にわたり、一言で内容を整理できるものではないため、どのような表現で各党の政策を簡潔明瞭に整理するかについて、我々は苦心した。最終的には、日本経済新聞に掲載された表(表1)を若干修正した表現を使ったが、分析結果は政策内容の表現によっても影響を受けている可能性があることに留意したい。

TPPにはむしろ賛意、憲法改正は意見割れる

 TPPに関しても、興味深い結果が得られた。安倍首相は昨年3月15日に交渉に参加することを表明し、自公両党、および民主党は、「参加するが自由化には慎重」という立場である。これに対して、「参加して積極的に自由化を推進」(維新、次世代)という立場は政党支持態度を変えることに寄与しなかったが、「TPPへの参加反対」(生活、社民、共産)という立場に対しては、支持率を有意に下げる効果が確認された。この結果から、国益を踏まえてTPP交渉を継続していくという国の方針に対しては、国民的合意が形成されつつあると言えるのではないか。

 今回の選挙で自公連立政権が3分の2以上の議席を獲得したことで、今後、憲法改正をめぐる動きが加速する可能性がある。その憲法改正に関しては、自民党、民主党、維新の党、次世代の党の「改正に賛成。国民の手による新しい憲法を制定」という立場に対して、社民党、共産党の「現行憲法条文のいかなる変更にも反対。平和憲法を守る」という立場は、両者への支持が拮抗しており、全体としてはほぼ互角の支持率となった。

 一方で、公明党、生活の党の「現行憲法の基本原理を維持した上で必要な条文を追加」という立場が3%程度ほど支持率を有意に上げている。いわゆる「1955年体制」で最大の争点であった憲法をめぐる論議は、「自主憲法制定」対「平和憲法擁護」という対立軸を残しつつ、徐々に多様なかたちに変化してきていることの表れだろう。

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