そのようなバイアスは、今回の調査では完全に排除されている。また、各争点の政策も完全にランダムに割り当てられているため、特定のタイプの有権者(例:民主党支持者、70代、男性、千葉県在住、無職)に、ある特定の政策内容が提示されるということはない。このことは、通常の世論調査データ分析のように、回答者の属性(年齢、性別、在住地、職業、教育水準、所得水準など)を「コントロール」しなくても、どの争点のどの政策が有権者の支持政党選択において重要であるかを、統計的に推計できることを意味している。

 2つ目の点は、今回の調査で回答者に行ってもらったような作業は、必ずしも現実的にあり得ない作業ではないという点である。実際、【表1】のように、各党の政策を簡潔に整理した表は、ほとんどの主要全国紙が公示日までに少なくとも1つは作成している。インターネット上でも、似たような表はたくさん公開されている。全党のマニフェストを全て読破する有権者は、一部を除けばほとんどいないはずである。

 また、主要全国紙が長文で紹介する各党の政策サマリーを丁寧に読んで比較する有権者も、少数であろう。多くの有権者にとって、各党の政策を比較する際に入手しようとする情報は、【表1】のような簡潔明瞭な表なのではないか。それらを1分前後だけ眺めた上で、主な争点に関する各党の政策の相違を「だいたい」理解しようとしているのではないか。そうであれば、我々の実験で回答者に行ってもらった作業は、かなりの程度、現実の判断過程に近いはずである。何よりも我々は、実際の選挙運動期間中に、各党が提示した実際の政策を素材に、この実験調査をデザインしている。したがって、調査に参加した回答者が、同時進行していた実際の総選挙における議論を踏まえて質問に答えていたと仮定することは、おおむね妥当であろう。

驚きの結果

 さて、注目の分析結果を示したものが【図1】である。なお、本稿で紹介する結果は、わずかな時間で分析を行ったこともあり、あくまで暫定的なものである。細かい統計的処置を施したり、回答者のタイプに応じた詳細な分析をしたりした上でのより精緻な結果は、別途執筆予定の学術論文を参照いただきたい。

【図1】
【図1】
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 この図、カラフルな飛行機がたくさん飛んでいるところを前から見たような感じにも見えるが、この見方をまず解説したい。まず、それぞれの争点に関して、自民党の政策(多くの争点に関しては自公両党の政策)を「基準点」として一番上に示している。例えば、図の一番上の消費再増税に関しては、「2017年4月に10%へ。軽減税率を導入」である。

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