その後、プロジェクトの方向を一時的に転換し、諸処の手続きを急ピッチで完了させ、12月4日にインターネット調査によるサンプリングを開始。投票が始まる12月14日の朝7時にサンプリングを終了。その結果、10日間のサンプル期間中に、全国から1951人の回答を得ることができた。なお、インターネット調査では、全国の有権者を代表するサンプルを入手しにくいといわれるが、我々は様々な工夫に基づいて、サンプル・バイアスが相当程度低いと考えられるデータを入手することに成功している。

 この調査の準備段階で我々は、まず、自由民主党、民主党、維新の党、公明党、次世代の党、日本共産党、生活の党、社会民主党の各党が発表したマニフェスト、および主要全国紙による各党のマニフェスト解説を丁寧に読んだ。その上で、(1)消費再増税、(2)雇用政策、(3)金融財政政策、(4)成長戦略、(5)原発再稼働、(6)TPP(環太平洋経済連携協定)、(7)集団的自衛権、(8)憲法改正、(9)議員定数削減の9つを、有権者にとって特に重要と思われる争点として選んだ。また、各党の政策内容を吟味し、争点ごとに各党の立場を3~4つの政策に整理した。

 この過程で最も参考にしたのが、日本経済新聞に12月1日に掲載された【表1】のような内容である。「特に重要と思われる」争点を選択する上で、また争点ごとの政策内容を整理する上で、研究者の主観を完全に排除することはできない。しかし我々は、安倍首相の解散表明後、主要全国紙、インターネット上の記事、公開討論会の内容などを、連日徹底的にフォローし、可能な限り客観的に、公正に、かつ分かりやすく公約内容を整理することに努めた。

【表1】出所:<a href="http://www.nikkei.com/article/DGXZZO80339310R01C14A2000000/" target="_blank">12月1日付日本経済新聞記事</a>を基に当サイト作成
【表1】出所:12月1日付日本経済新聞記事を基に当サイト作成

どの政党を支持しますか?

 このようにして公約内容を整理した上で、インターネット調査に参加した回答者に、【表2】のような表を提示した。この表では、9つの争点の順番が、回答者ごとにランダムに割り当てられている。さらに、2つの「仮想」政党をつくり、争点ごとに用意した3~4つの選択肢(政策)のうち1つをランダムに割り当てた。

【表2】
【表2】
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 表中の「集団的自衛権」の項目のように、争点によっては2つの政党の間に違いがないケースも出てくるが、これは実際の選挙で、部分的に似たような政策を掲げる政党が複数あるのと、まさしく同様である。

 このような表を提示した上で、各回答者に、どちらの政党を支持するか選んでもらった。そして、この作業を回答者ごとに、5回ずつ繰り返してもらった。毎回ランダムに生成される仮想政党は少しずつ異なるが、表の中にある2つの政党が全く同じになる確率はほとんどない。この作業を通じて、各回答者は意識しないうちに、9つの争点を比較して、どの政策を重視するかを判断しているのである。つまり、政策のパッケージを「総合的に」判断した上で、支持する政党を選択しているのである。

 今回我々が使ったこのコンジョイント方式の世論調査は、いろいろな政策について一つひとつ順番に賛成か反対か質問していく通常の調査と対照的である。通常の方式の場合、個々の政策について有権者が賛成なのか反対なのかについては、確かによく分かる。しかし、それらの政策を公約=パッケージとして提示された際に、有権者が果たしてどのように「総合的な」判断をするかについては、全く見えてこない。現実の選挙で有権者が個々の政策について個別に判断を下すということはほぼあり得ないことを考えると、今回の方式でより真に迫った分析が可能になると言ってもよいであろう。

 調査結果を報告する前に、2つの重要な点について言及したい。1つ目は、争点の順番も、各争点の中身(政策)も、完全にランダムに割り当てられている点である。通常の世論調査では、ある政策(例:憲法改正)に関する質問をした後、別の政策(例:集団的自衛権)に関する質問をするということがあり得るが、そのような調査では、質問の順番が回答内容に影響を与えている可能性がある。

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