では、有権者は、どのように各党の政策を「総合的に」比較しているのだろうか。パッケージとして提示された公約のうち、どの争点を特に重視しているのだろうか。今回の総選挙の場合、経済・財政政策や雇用政策が有権者の最も重視する政策だったのか。それとも、消費再増税に関する各党の立場を重視したのか。また有権者が重視している争点(例:原発再稼働)に関しては、どのような政策内容(例:再稼働を認めない、条件付きで認める、など)を望ましいと思っていたのか。

 この問いに答える計量的アプローチが、「コンジョイント分析」と呼ばれる、マーケティングの分野では長年用いられてきた手法である。これを、著者の1人(山本)を含む、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、米スタンフォード大学、米ジョージタウン大学の研究グループが、最新の統計理論(統計的因果推論)に基づき精緻化し、コンピューター・サイエンスにおいて多用されている言語を用いたプログラムを開発したことで、ここ1~2年、政治学における応用研究が急増している。

 コンジョイント分析を説明する上では、消費者の自動車選びを例にすると分かりやすいかもしれない。消費者が自動車を選ぶ際、何を判断材料にするであろうか。メーカー、燃費、マニュアルかオートか、安全性、シートの数、トランクのスペース、オーディオ装備、等々、様々な属性を多かれ少なかれ考慮の上で、1つの自動車を選んでいるはずである。

 ある人は、あらゆる属性を徹底的に比較検討した上で、購入する自動車を決めるであろう。別の人は、よく耳にするメーカーや車の名前だけで、簡単に決めているであろう。また別の人は、メカニックな性能についてはあまり気にせずに、色と値段だけで決めているであろう。そうした多様な属性を判断材料にして消費者が自動車を選んでいることを前提として、消費者にとってどの属性が重要かを統計的に解明するのが、コンジョイント分析である。

 既にお気づきの読者もいると思われるが、消費者の自動車選びと、選挙における有権者の支持政党選びは、実はよく似ている。有権者は、消費者の日ごろの行動のように、様々な選択肢(政党)の中から一つを選んでいる(厳密に言えば、衆院選挙の場合は小選挙区と比例区で1つずつ選ぶことができる)。また、一つひとつの選択肢(政党)には多様な属性(政策)がある。それらを「総合的に」判断した上での選択行動をしているのである。

選挙運動期間中のデータで分析

 我々は、このコンジョイント分析を今回の総選挙の選挙運動期間中に実施した。実は我々は、全く別のプロジェクトでコンジョイント分析を行う準備を進めていたが、その準備がほぼ完了した11月18日に安倍首相が突然、解散表明したことを受け、新たなコンジョイント分析をする絶好の機会だと判断した。実際の選挙運動期間中に得たデータで、各党の実際の政策内容に基づいたコンジョイント分析をし、どの争点が実際の選挙において重要であったかを調べる研究は、我々の知る限り、この研究が世界初となるからである。

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