しかし、有権者が各党の公約を完全に無視しているというのは、極論であろう。「〇〇さんの人柄が良いから」と言って投票する有権者であっても、〇〇さんの政党や政策を無視しているとは考えられない。例えば、どんなに人柄が良さそうな候補者であっても、その候補者が絶対に支持したくない政党から出馬している場合は、その人に投票しないであろう。

 では、なぜ、ある政党には絶対投票したくないと思うのだろうか。その一つの理由は、何か重要な争点に関して、その政党が提示する政策を支持することができないからなのではないだろうか。例えば、憲法改正に徹底的に反対する人は、憲法改正に賛成だけど人柄が良さそうな候補者と、憲法改正に反対だけど人柄が悪そうな候補者のどちらに投票するであろうか。

 その判断に迷った上で、人柄が良さそうな候補者を「総合的に」選んだとすれば、それは人柄「だけ」で選んだわけでなく、政策も考慮の上で候補者を選んだことになる。

 つまり、「総合的に」判断している以上、各党の政策内容は判断材料に入っていることになる。しかし、今回の選挙のように複数の争点がある場合、有権者の判断は無意識のうちにかなり複雑なものになっているはずである。

 例えば、ある有権者は原発再稼働には反対だが、アベノミクスにはおおむね賛成し、憲法改正には絶対反対かもしれない。もし、自分にとって好ましい政策パッケージを完璧に提供してくれる政党がない場合は、どうやって支持する政党を選ぶのであろうか。

 どの争点も均等に重視するのだろうか、それとも特定の争点に関する政策に注目するのだろうか。様々な争点に関する各党の政策を比較した上で判断しようとすると複雑になるので、政策はあまり重視しないで、政策以外の要因で支持する政党を決めるのだろうか。

支持政党選び=自動車選び

 このように、選挙において有権者は、意識しようがするまいが、各党が提示する様々な政策を少なくともある程度は考慮した上で、支持する政党を判断しているはずである。繰り返しになるが、我々は、政策こそが有権者の政党支持において最重要だとは必ずしも思っていない。また、有権者が各政党の一つひとつの政策を十分に検討しているとも思っていない。しかし、有権者が各党の政策を全く無視しているはずはない。

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