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※2019年11月8日公開の「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」が、異例のヒットとなり、大人の男性向け上映会も行われるなど話題になっています。このキャラクターが持つ魅力はどこにあるのかを探ったインタビューを再掲載します。(前回はこちら)。

日経ビジネスオンラインに、2015年10月16日に掲載したものを転載しました。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 社会人に支持層が広がっているキャラクター「すみっコぐらし」。シンプルな線でかわいいけれど、主役を張る気はぜんぜんないらしく、いつも隅っこに固まって「ここがおちつくんです」「ここにいたいんです」とつぶやいている。登場から3年、今や、同社の主力キャラ「リラックマ」に次ぐ存在に育ったこのキャラクターたちを生んだのは、入社1年目の新人デザイナーだった。

 日経ビジネスオンラインの読者層にもきっといる、「電車は隅っこ」「お店も隅っこ」に座るのが好きな皆様へ、デザイナーの横溝友里さん、制作本部商品企画室の鈴木正人次長、キャラクター事業部広報宣伝担当の桐野朋子さんから伺った、「すみっコ」のキャラクター作りの背景、そして、入社1年目のデザイナーが、なぜいきなり大ヒットをかっとばせたかについて、お伝えしよう。

(前回から読む

「すみっコ」を初め、サンエックスのキャラクターの共通項は「ちょっと変」。そして、バックグラウンドのストーリー、キャラクター設定がマニアックに作り込まれていることがあるとうかがいました。「すみっコぐらし」は、入社1年目の横溝さんが提案した原案「すみっコ」の時点でそれが揃っていて、通常はアンケートやテスト販売を繰り返して慎重に発売を決める御社の中で、いきなり「もうこれで行こう」と決まった、異例のケースであると。

「とんかつ」が広げた世界観

鈴木:ええ。「サンエックスらしいよね」と、全員納得して話が進みました。その、すみっコのキャラクターがストーリーを支えている1つの要因として、実は、この「とんかつ」があるんですよ。

「とんかつ」は、脂身が多いので残されてしまった、とんかつの隅っこがモチーフ。

鈴木:実は昨日も採用面接があって、「すみっコの中のどれが好き?」って受験者のみなさんに聞いたときに、なぜか「しろくま」派と「とんかつ」派に分かれたんです。ここは大事なポイントです。最初の、横溝のカンプをもう一度見て頂けますか。大きな共通項があるのがわかるでしょうか。

当初案。一番右の「ふゆうれい」は、当初は太ったへびがモチーフのキャラクターだったそうだ。

ああ、わかりました。キャラが全部動物ですね。ゆうれいもいるけど。クマ、羊、ペンギン、あ、キリンもいたんだ。

鈴木:そうなんです。当初案では「隅っこにいる」というコンセプトはしっかりあるんですけど、このままだとたぶん「かわいい動物シリーズ」になっちゃうんです。

なるほど。「しろくま派」しかいなくなっちゃう。

鈴木:でも、ここに「とんかつ派」が入ったことによって、「隅っこ」というコンセプトがすごく強烈になったわけです。

確かに。でも、“残りもののキャラ”って、改めて考えるとものすごく違和感もありますよね。

鈴木:ということで、改めてここで横溝に聞いてみたいんですが、何でまたとんかつって思いついたんですか。「すみっコ」の候補としては、他にもいろいろ切り口があったと思うんだけど。

ごめんね、残して、という気持ち

横溝:う~ん、そうですね。やっぱり食べ残されたものに対して、かわいそうだなあとか申し訳ないなあと思う気持ちは誰でも共感できるのではないかと思いまして。何かしら「食べ残し」キャラは入れたくて、他にもいくつか候補はあったのですが、インパクトの強い「とんかつ」を入れました。他に、「たぴおか」も飲み残しキャラとして入れています。

食べ残しって隅っこにたまりますもんね。

横溝:そうですね。本当に皿の隅に置いてきぼりになっている、残された、みたいな。変わったものを入れたいなというのはあったんですけど、「食べ残し」ぐらいにしておこうというのがあったので、ほかにも「えびふらいのしっぽ」が後から出てくるんですけど。