戦後、寂聴さんは、瀬戸内晴美として人気作家になります。そして、51歳になって出家された。いまでいうところの「第2の人生」を歩み始めますね。

 本でも明かしたように、いろいろありました。夫と子供がいながら恋をして、そう、不倫ですね。家を出て、作家になって。そのあと出家して。出家してからもう44年もたっちゃいました。こんなに長生きするとは思わなかった。何度か病気もしたけれど、ちゃんと治りましたし、いまも毎日執筆活動を行い、法話も毎月しております。このままだと100歳までは生きそうね。

これからは多くの人が寂聴さんのように長生きする「人生100歳時代」になる、と言われています。一方で寂聴さんが出家された50代前半くらいで、うつ病になったり、自殺したりする日本人、とりわけ男性がとっても多いんです。

 よくわかります。私の法話を聞きにいらっしゃる方たちの中にも、うつっぽくなった中高年の男性、多いですから。

 実は、私、うつになりかけたら治す方法を自分で見つけたんです。

 そもそも、人間、歳をとったら、だいたいうつ状態になりやすくなります。なぜかというと人生に面白いことがどんどんなくなるから。そしていったん、うつになっちゃうとそこから逃げ出すのはとっても大変です。

 私も出家する直前、40代のころにうつになったことがあるんです。そのとき診てくださったのが、古沢平作さんという日本の精神分析の権威の先生でした。古沢先生はなんと戦前のウィーンであのフロイトに直接習った、フロイトのお弟子さんなんです。古沢先生の、私は最後の患者さん。その古沢先生のやり方がとってもユニークでした。とにかく褒めるの、患者の私のことを。

 うつになるってことは、自信を失っている。だからひたすら一生懸命褒めてあげる。
 ああ、あなたは着物の趣味がいいなあ。性格がいいなあ。
 古沢先生は、徹底的に私のことを褒めてくださいました。
 そうしたらね、治ったの、私のうつ。

褒められてひとは元気になる

褒めちぎるのがいい、と。

 歯が浮くような台詞を並べて褒めても大丈夫。そのくらい盛大に褒めるのが、うつには一番効くんです。古沢先生に教わった「うつの人は褒めてあげよう」は、その後の私の人生の指針のひとつになりました。

 いま、私のところには、法話を聞きにたくさんの人々が訪れます。法話を聞きたい人には、人生がつらいって人がとても多い。だから、私はそんな人たちのことを徹底的に褒めます。お話をうかがって、とにかく褒めてあげる。するとね、ちゃんと治るのよ。いままで何人のうつを治したか数えきれないほどです。

どうやって褒めるんですか?

 うつ状態のひとはとにかく自信を失っています。その自信を取り戻すのが目的ですから、褒める内容はなんでもいいんです。あなたはとってもチャーミングよ、今日の洋服の色はとっても素敵だわ、いい声しているわよね。ほんとうにたわいもないことでいいから、そのひと自身の個性を褒めてあげる。会うたびに褒めてあげる。すると何度か顔を合わせるうちに、だんだん元気を取り戻してくるんです。

「日経ビジネスオンライン」の読者でもある、中年以上の男性も褒められると元気になるんでしょうか?

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