なるほど。ノウハウがないのが問題であると。

 市場への足がかりがないのです。一方で、いったん市場への足がかりを得たら、ノウハウは自然に進化していきます。貧しい人々に、チャンスを与えるのです。日本の中小企業も単独で中規模の町でビジネスを展開するのは、言葉の問題などで難しいでしょう。地元企業と組めば、地元の労働者が喜んで働きにきますよ。パートナーシップがカギです。そして事業のターゲットを特に貧困層に限定する必要もない。輸入商品の製造スタッフとして雇うなど、現地で雇用を創ってくれればいいのです。

貧しい人々を、貧困の連鎖から断ち切らせる力になるのは、どのような取り組みでしょうか。

 途上国支援の世界では現在、まずは情報提供が最初に必要だ、情報はタダだから、という話が人気です。しかし情報はタダではありません。情報を持ってくる人を雇わなければいけません。しかし情報提供会社を作ったところで全く効果はないでしょう。それだけで貧しい人たちの行動を変えることはできません。彼らはそうした情報を信用しないし、理解しませんから。もちろん彼らがサービスを得られる場所などに関する情報提供は重要なのですが、思うほど簡単ではないのです。

 これは識字率の問題だけではありません。先進国の人々が提供する情報は、何であれ先進国の考え方、思考回路、文化に合うように作られています。そのためにときには情報が多すぎて、必要な人に必要な部分が届かなかったりもします。受け手が、「自分に関係ない」と思ってしまうからです。これが特効薬、というような方法は最初にも触れましたが、存在しないのです。

女性の活用と、経済成長を絡めるべきでない

先進国のケースで、職業訓練を公費で続けても、雇用創出には貢献しないという研究をされました。

 そうです。結局仕事の数は同じなので、訓練を受けた男性は採用され、その分誰かがふるい落とされるだけだったのです。女性は訓練を受けてもそれが就業に役に立たない場合が多かったです。雇用全体が増えないので、失業率の改善には役に立たない。スキルを身に着けた人材とそうでない人材の雇用の再配置が起こっただけで、雇用を生み出さないのです。効果的な政策とは言えないのです。

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