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社員は大人か子供か

 柔軟な働き方への移行が進まない理由と変わりつつある点をまとめてみると、残っている課題が三つほどあると思われた。一つは労務管理である。事務所に必ずしも出てこない社員の働きをどう管理するのか。社員が怠けないように規律をどう維持するか。もう一つは情報セキュリティ対策である。社員が持ち歩くノートパソコンやスマートフォンから情報が漏洩しないようにできるのか。これら二つの課題に手を打ち、働き方を変えている企業はすでにあるから参考にすればよい。

 最後に残る課題は、組織と構成員である個人との関係をどうしていくかである。台風が来たとき「出社するかしないか自分で判断せよ」と連絡する組織は構成員を大人とみなしており「安全に十分注意して出社するように」と通達する組織は意識しているかどうかは分からないが構成員を子供扱いしている。学校に行く児童に「車に気を付けて」と呼びかけるようなものだからだ。

 個人のほうはどうか。自立した個人として組織と契約し成果を確約して働くより、組織という疑似家族の一員であることを好む人は、出社しなくてもこなせる仕事の担当者であっても台風の際に出社を試みる。出社というより帰宅あるいは帰巣に近いのかもしれない。

 ここまで書いた原稿を読み直してみると、「日本企業も外資系企業を見習え」という主張と読者に受け取られるかもしれないと気付いたので補足する。どう経営するかは企業の判断であり、どう働くかは個人の判断である。外資系企業の経営がすべて素晴らしいわけではない。組織の和を優先する日本企業ならではの強さというものはある。

 それでも組織と個人との関係をどうするかは難しい課題である。さかのぼると明治維新以来の懸案と言える。筆者が一番関心を寄せているのはこの点なのだが、解を見出せていないため課題の指摘だけに留める。