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 日本企業が在宅勤務を含む柔軟な働き方に移行できない理由ははっきりしている。国、企業、社員、皆やりたくないのである。一方で今度こそ日本は変わるという指摘も出ている。やりたくない理由、変わるかもしれない理由を列挙してみよう。

 国がやりたくないのは、労働基準法をはじめとする労務関連の法律との兼ね合いがあるからだ。自宅を含む社外における勤務を認めてしまうと社員が働く時間と内容を把握できなくなり、結果として企業や組織が過重な労働を強いる懸念がある。こう言われている。「厚生労働省は労働者に配慮しているわけではなく、既得の権限を維持したいから何も変えたくないだけ」と解説してくれた人もいた。

働き方は見直さざるを得ない

 しかし、安倍政権になってから女性を働きやすくする、テレワーク(在宅勤務)を進めるという方針がたびたび提示されており、関係省庁が推進のために本腰を入れ出したとの指摘もある。

 企業がやりたくないのは、労務関連の業務で見直す点が多々出てきてしまい面倒だからだろう。国土が広い米国でならともかく日本では顔を合わせて仕事をしたほうがいい、外で仕事をさせると情報セキュリティの問題が出る、米国のインターネット企業ですら在宅勤務を止めると宣言した例があるではないか、といった声が上がる。

 しかし災害時の事業継続、世界各国の現地法人との連携、そしてもう一段のコスト削減が必要になり、働き方を見直さざるを得なくなってきた。コスト削減とはインターネットを通じて会議をすることで出張を減らしたり、社外における勤務を奨励して事務所を縮小したりすることを指す。

 社員がやりたくないのは、仕事をするのは事務所だけにしたい、家では仕事のことを忘れたいと思うからである。成果さえ出せば勤務場所は問わないと言われても困ってしまう。すべての社員が反対しているわけでは無論ないが、すべての社員が柔軟でなおかつ成果を重視する働き方を望んでいるわけでもない。そもそも企業は仕事に使うパソコンの持ち出しを禁じてきた。

 しかし、多くの社員がスマートフォンを持ち、仕事の電子メールを手元で確認でき、事務所のパソコンの前に座らなくても仕事がこなせることの便利を実感しつつある。社外で仕事をするかどうかさておき、現状の働き方を変えたいという意識はある。2012年の調査だが日経ビジネスオンライン読者に尋ねたところ回答した2638人のうち「働き方を変える必要」に関する質問に38.9%が「強くそう思う」、51.1%が「そう思う」と回答した。