※この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年2月19日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 「多くの経営者が考える善い会社の定義は間違っている」

 こう断言するのは、米シリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタリストの原丈人氏だ。デフタ・パートナーズのグループ会長を務める傍ら、アライアンス・フォーラム財団の代表理事として、バングラデシュやザンビアといった発展途上国の人々を経済的自立へと促す活動にも携わる。また、「公益資本主義」を提唱していることでも知られる。

 こうした活動を通して世界各国の政財界人と親交の深い原氏に、グローバルの視点から見た「善い会社」の定義について聞いた。

(聞き手は池松 由香)

会社は株主だけのものなのか?

 米国をはじめとする欧米諸国では、「会社は株主のものである」と考える、いわゆる株主資本主義が跋扈している。日本の経営者の多くも、この考え方に洗脳されているのが実情だ。だが、私はこの考え方は間違っていると思う。

「日本だからこそ、『善い会社』を世界に発信できる」と原丈人氏は語る(写真:村田 和聡)

 メディアも悪い。ここのところ、ROE(自己資本利益率)の高い会社をもてはやす傾向にある。過去には、ROI(投下資本利益率)、ROA(総資産利益率)にEPS(1株当たり利益)…。その時々で様々な指標を持ち上げてきた。これらの指標は、時代とともに移り変わる女性のスカート丈と一緒。あくまで「流行」にすぎない。

 では、会社は誰のものなのか。誰に対して利益をもたらす会社が「善い会社」なのか。例えば、こんな会社が米国にあった。

 その会社の経営トップは、社外からやってきたある人物。トップに就任するや独自路線で経営を推し進め、競合他社の買収を決行。過去最高益も達成した。「わが社はベストカンパニー。証券アナリストの評価もトップクラス」と誇らしげだった。その直後、その経営者はこんな決断をした。

 「人員削減を実施する」

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