※この記事は日経ビジネスオンラインに、2011年11月24日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。
経営コンサルタントをしていると、あたり前のことだが、企業の経営者と話をする機会が多い。経営に対する感性を持っているかどうか、少し話せばすぐ見える。
今、日本の企業に必要なのは長期計画だ。だが、その必要性を感じる経営者は少ない。作り方がわからない経営者も多い。そこで、経営のファンクションとは何か。そのために必要な3つの「性」について、考えてみた。
後ろを向いた経営
前向きな経営が必要だと知りながら、後ろを向いた経営者が多い。「あなたの経営は後ろ向きだ」と指摘すると、案の定、それを打ち消す口上をあれこれと続く。指摘されるのは気分のいいコトではないだろう。しかし、何のために私が指摘するかというと、前向きと後ろ向きがわかっていないことが問題だということに、気が付いてもらうためなのだ。
しかし、これから先のことを考えていない経営者などいない。来月はどうか、来年はどうかということを常に考えているはずだ。そのために、常に最新の経営指標を頭に入れ、企業を取り巻く経営環境の変化に気を配っている。
私からすれば、それは前向きではない。ただ単に、状況に反応しているだけだ。たとえ、攻めの姿勢で、先のことを考えていると言っても、実際、攻めていないし、先のことを考えていない。「今」に反応することにアクセクしているだけなのだ。前向きというのは、現状最適を考えることではなく、将来最適を考えることである。
将来最適を考えると、自ずと前向きになるものだ。同じアクティブでも、リアクティブとプロアクティブは違うのだ。リアクティブな経営は現状最適の経営だ。プロアクティブな経営こそが、将来最適の経営にほかならないのだ。
今時だから長期計画
今時だから長期計画を立てるべきである。国政、経済、国際の変化が激しい今だから、長期計画が必要なのである。先が見えない時だから、必要なのである。社員が不安だから、作らなければならないのである。今こそ長期計画を立て、企業活動における、判断の拠り所にすべき時なのである。
仮に、長期計画を立てても、果たして有効な計画になるのだろうか。直ぐに、絵に描いた餅になってしまうのではないだろうか。結局、作り直すことにならないだろうか。経営に不安はつきものだ。長期計画の話をすると、経営者からいつも不安をぶつけられる。
経営者は、企業活動のベクトルを合わせなければならない。方向がバラバラだと、企業としての力を結束できなくなる。社員の考えがちぐはぐになり、社内で意見が別れ、対立と議論に経営リソースと感情エネルギーが消費されていく。そうして管理者と会議が増えていくのだ。これで経営が成り立つ訳がない。
だから、長期計画が必要なのである。長期計画が中期計画を産み、中期計画が年度計画を作るのである。そして、年度計画がアクションを決めるのである。やることとやらないことが明確になるのだ。
マネジメントってなんなんだ
管理するコトをマネジメントという。経営するコトもマネジメントという。しかし、管理するコトと経営するコトは、同じではない。それなのに、マネジメントとか、マネジするとか、よく耳にする。どっちの意味で使っているのか、わからない。わからないということは、伝わっていないのだ。伝わらないで、会社がまとまるわけがない。
実際、「経営とは管理することだ」と平気で言う経営者がいるのだ。経営に管理はつきものだが、それしかしていないということを公言しているのだ。経営から管理を引くと何も残らない。これでは、最高経営責任者ではなく、最高管理責任者だ。
経営には、方針決定と事業管理の2本柱がある。方針決定ができなければ、経営とは言えない。方針決定とは、方針を決定させることではない。経営者、自らの見識と認識で、方針を決定することだ。これから、何をやるのか、何をやらないのかを決めることにある。そして、やらせる、やらせないのが、管理である。
だから、経営と管理は別物なのだ。マネジメントと言うコトバを使うべきではないのだ。まして、管理が経営だと勘違いしないことだ。方針決定こそが、長期計画なのである。長期計画のない企業は、方針を決定していない企業なのである。

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