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マネジャー:「真摯さ」ですか。誠実とか、善良である、ということでしょうか。

老教授:少し違いますね。この「真摯さ」という訳語の元々の英語は「Integrity」、つまり「一貫性」です。ドラッカーは、この資質こそが大事だと強調しています。

マネジャー:一貫している人というのは、例えばどういう点が一貫しているということでしょうか。

老教授:まさに、あなたが先ほど言われたことです。まず、自身が仕事の中で実現したい目的やイメージが明確にあって、その情熱にしたがって、チームやメンバーの力を純粋に引き出そうとしている一貫性。また、人間として、仕事人として人格が乖離することなく、一貫しているということ。向き合う相手によって態度や主張、話す内容を変えない、志を持っている、という意味で一貫しているということですね。

マネジャー:なるほど、確かに私が先ほど話した「信頼し、ついていきたい上司、リーダー像」とも重なります。

心から「真意」を語っているか

老教授:冒頭の話とつながりますが、この真摯さこそが、人々の信頼を得ていくために、リーダーや上司として何より大切な資質と言えます。ドラッカーは、こうも言っています。

「信頼するということは、リーダーを好きになることではない。常に同意できることでもない。リーダーの言うことが真意であると確信を持てることである。それは、真摯さという誠に古くさいものに対する確信である。」

(「未来企業」より)

マネジャー:その人の言うことが「真意」であると確信できる……。これまでリーダーの基本条件は、人に好かれるカリスマ性や雄弁さ、説得力といったことかと考えていましたが……。

老教授:全ての人に好かれているとか、全員から賛同を得ることが大切なのではありません。そんなことは不可能です。ただ1つ、ドラッカーが言っているのは、「心の底から、自分が本当にそう思っていること」を語るということです。内容に100%賛同できない人も、リーダーを個人的には好きでない人ももちろんいるでしょう。しかし、「自分は、心の底からこれを実現したい、これを大切にしたいと思っている」と語れる真摯な人は、信頼されるはずです。

マネジャー:自分の心からの思いと、言動が一貫している、「言行一致」であること、それが「真摯さ」「Integrity」の根幹だということですね。