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老教授:そうです。これはすなわち、「リーダーは、人として信頼を得ることを何より大切にせよ」というドラッカーのメッセージでもあります。どんなに技術が発達しようとも、「企業は人」です。人と人とが信頼し合い、支え合い、刺激し合い、協働する状態をつくることが何より重要です。信頼関係なくして、組織からは何も生まれません。そのために、まずリーダー自身が信頼されることが大切です。

マネジャー:どうすれば、人からの信頼を得ることができるのでしょうか。

老教授:あなた自身は、どんな人であれば信頼し、ついていきたいと思えますか。

マネジャー:私自身が、ですか……。あまり考えていませんでしたが……。やはり、その上司、そのリーダー自身に「こういうことをやりたい」という夢や情熱を感じる人、というのが第一だと思います。「管理のための管理」「細かい指示・命令」が目的化している人ではなく、意義のある事業目的をまず自身が抱いていて、それをメンバーと共有し、その目的の実現のために、個々人が力を発揮しやすい環境をつくり、任せてくれるような人でしょうか。

老教授:なるほど。では、逆に「ついていきたくない」と思う上司やリーダー像は、どうでしょうか。

マネジャー:うーん、それも難しいな……。一言で言えば、利己的というか、不誠実な人ですよね。部下に厳しい要求をしながら、失敗に対しては部下だけの責任にしようとしたり、あるいは、部下の貢献よりも自分の功績を強調したりするような人は、論外だと思います。

老教授:ありがとうございます。もう1つ、ドラッカーがよく尋ねていた質問をさせてください。あなたが、ご自身の子供を預けたいと思える上司、リーダー像とはどうでしょうか。

マネジャー:自分の子供を、ですか……。確かに、私にも息子と娘がいますから、切実ですね。そうですね……親としての希望を言わせてもらえれば、「仕事力」に加え「人間的魅力」も有した人、もっと端的に言えば、厳しくても「愛情」を持って部下に接してくれるような人がわが子の上司であれば、こんなに嬉しいことはありません。

老教授:ありがとうございます。率直で、とてもわかりやすい理想のリーダー、上司像ですね。

「真摯さ」

マネジャー:先生にご質問いただく中で、リーダーとして部下の信頼を得ていくというのは、何か並外れた能力を発揮することよりも、人として、職業人として、ビジネスパーソンとして1つの「筋」がしっかり通っていることが大切だという気がしてきました。

老教授:そのとおりです。リーダーの人間的な部分が、「信頼できるかどうか」を決めます。それは、上司、上長として組織のマネジメントにあたる人に求められる資質と合致します。ドラッカーは、このように言っています。

「根本的な資質が必要である。真摯さである。最近は、愛想よくすること、人を助けること、人付き合いをよくすることが、マネジャーの資質として重視されている。そのようなことで十分なはずがない。事実、うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人付き合いもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。」

(「マネジメント」より)