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実は企業は分かっている

 こうした組織の複雑性を前提にすると、前回私が提案した「中間職」に対しても、留意しておくべきポイントがある。

 実は企業は、女性の活用を進めるにあたって、例えば「中間職」のような新しいキャリアを考えていないわけではない。

 総務省が行った「従来の男性型キャリアとは異なるキャリア多様化のとらえ方」の調査を見てみると、従業員が1001名以上の会社のうち47.2%は、「管理職以外の多様なキャリア形成があるべきだ」と答えているのである。つまり、すでに5割弱の企業が、「女性の活用」を進める上で、従来のキャリアだけでは行き詰まりを感じ、女性に活躍してもらうためには新しいキャリアが必要だと分かっているのだ。

 しかし、分かっていてもなかなか進まない。いや、なかなか進められないといった方が正しいかもしれない。

 なぜなら、人事制度は組織の文化や風土の骨格を成すものであるため、人事制度を変更する際には、現在の風土で育った社員がどこまでの変化だったら受容できるかをじっくり見極める必要があるからである。仮に、その受容の範囲を超えた変革を行ってしまうと、社員のモチベーションダウンが起こり、かえって組織の混乱を招きかねない。

 従って企業は、例えば「中間職」の合理性を十二分に評価したとしても、新しい職制を導入することによって発生するかもしれない混乱や副作用を予想して二の足を踏んでいる、と解釈できよう。つまり、多くの女性にもっと活躍してもらうためのキャリアコースとして「中間職」が合理的かつ魅力的な制度であったとしても、その導入に際しては相当の配慮が必要なのである。

 効率と合理性だけでは動けない、これが人の集合体としての組織の難しさの実態なのである。

トップが延々繰り返すしかない

 では、新しい制度を導入したり、新しい文化を醸成する、といった組織変革を実行していくにはどうしたらよいのだろうか。

 結局、現実的にはトップが強力なリーダーシップを発揮して断行する以外ないのである。

 実は、組織を変革する方法論の一つとして、コンサルティング業界でよく言われている手法に「チェンジマネジメントの8つのステップ」がある。組織を変えていく上で、ある種のお手本となる手法だ。

 そのチェンジマネジメントの第1ステップも「危機感の醸成」から始まっている。つまり、危機感を皆に周知徹底しなければ、「変化」に着手することすらできないのだ。また、チェンジマネジメントを実行していく途中では、「全社を方向づける新しい企業ビジョンを描いて社内に徹底的にPRすること」が重視されている。これらのステップはいずれも、「変革に対する組織全体の意識の熱量を上げること」に他ならず、それを強力に主導できるのはトップだけである。

 そして、その際の効果的なアプローチ方法は「論理だけではなく、情理に訴える」ことだ。