※この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年7月18日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 「女性の活用」に関連して、最近あるベンチャー企業の社長に伺った話は印象的だった。

 その会社は、数年前から女性の採用を人事戦略の中心に据えてきた。しかし、なかなか成果に繋がらない。数年前に比べると、就職合同説明会に集まってくれる女子学生の数は3倍近くに増えた。社長の自分も説明会には積極的に顔を出すようにしているし、中にはその場で自分が直接話をして、採用を考えたいポテンシャルの高い女子学生もいる。しかし、採用ルートに乗せ最終面接の段階になってその顔ぶれを見ると、自分が目をつけた優秀で魅力的な女性はほぼ全員いなくなっている、という驚くべき事態が起きていたのだ。

 このままでは大きな人材の損失に繋がると思い原因をじっくり調べてみて分かったのは、意外な事実であったという。それは、数年前から全幅の信頼で任せていた採用担当の女性マネージャーが、優秀で魅力的な女性に厳しい評点を下し、ことごとく落としていた、ということだったのだ。

 この話を聞いて、かつて「女子の鉄則として、合コンに自分より魅力的な女子を連れてこない」と男子が揶揄していた言葉をふっと思い出した。しかし、合コンならいざ知らず、ビジネスの話となれば事は深刻だ。

女性同士は協力的か?

 「女性は女性に協力的である」などと思い込み過ぎると、時に痛い目にあう。

 これを裏付ける調査結果は多数存在する。特にグラハム・ステインズらの研究はその代表例とされているが、彼らは「男性優位の環境で成功した女性は、他の女性の出世を良く思わない傾向がある」と結論づけている。

 男性優位の社会において、高い地位に昇ることができる女性はほんの一握りである。従って、やっとの思いで地位を手に入れた女性ほどその地位に固執する。仮に自分より若く有能な女性が登場すれば、それは自分の地位を脅かす存在に映り、助ける対象どころか敵として見なしてしまうのだ。その結果、女性が女性の足を引っ張って、成功や昇進を妨害する――。米国では1970年代にすでにこうした現象が問題視され、「女王蜂症候群」と名付けられたのである。

 現実にこうした“女王蜂”は至る所に存在する。昨今、ウォールストリート・ジャーナルなどで“女王蜂”の特集が組まれて話題になったり、フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグも、キャリアの中で自身が多数の“女王蜂”に遭遇してきたと苦い経験を語ったりしている。

 しかし、「女性が女性に協力的でない」のは、何も上司から部下の方向だけに見られるものではない。実は、部下から上司に対しても同様のことが証明されているのだ。すなわち、「女性の部下は、男性の上司に比べて女性の上司によりシビアな評価を下す」との調査結果も存在するのである。

 さらに近年、衝撃的な事実も分かってきた。

 それは、「そもそも女性は女性を助けない」というものだ。ダニエル・バリエットらの調査によれば、男女は協力の仕方に異なる特徴を持つという驚くべき結果が導かれたのである。その特徴というのが、まさに「男性は同性に対しての方が協力的であるが、女性は異性に対しての方が協力的である」ということだ。

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