※この記事は日経ビジネスオンラインに、2015年12月15日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。
中小企業を中心に300社以上の社長の経営相談に乗り、9000人以上の社員を育てている、経営コンサルタントの東川広伸氏。「手間ひまはかかるものの、残念な社員を自分で考えて動く一流に変えることはできる」との信念を持つ。大企業に比べて、お金などの経営資源に乏しい中小企業でも、一流社員を育てることができる秘訣とは何か。1回目は、最も大切なトップの心構えについて、解説してもらう。
「東川さん、どうすれば自分で考えて動く社員が育ちますか」。私はこれまで経営コンサルタントとして、中堅・中小企業の多くの社長から経営相談を直接受けてきました。ほとんどの社長に共通するのが、こうした「人財」育成に関する悩みです。

「社員が育たない症候群」。この症状が最近、深刻になっているように感じます。どの会社でも、自分で知恵を働かせて価値を創造する社員━━私は「自創社員」を呼んでいます━━を育てたいと考えています。でも、なかなかうまくいっていないのが現実です。
若者の数が減っているので、小さな会社は人を採用するだけでも一苦労。やっと獲得できても、なぜか上からの指示を待つばかりで自発的に仕事をしてくれない人に育っている(実は育てている)。熱心に教えたつもりでも、あっさり辞めてしまう。この「負のスパイラル」にはまってしまい、なかなか抜け出せないのです。
自分で考えて動く社員が成長しないのは社長のせい
でも、大丈夫です。それを解決する方法があります。しかも、今すぐ始められます。それは「社長自身が社員の成長を心の底から願う」ことです。
少し考えてみれば、簡単なカラクリだと思いませんか。面と向かって口に出すかどうかはともかく、社長が心の中で「こいつはダメだなあ。仕事ができないやつだ」と社員にレッテルを貼った瞬間に、その社員は成長しなくなります。
だって成長の可能性を社長に信じてもらえないわけですから。そんな社長の本音を社員は態度からすぐ感じ取ります。
「俺(私)は期待されていないんだ」と敏感に見抜きます。がっかりして辞めていくか、辞めないまでも最低限の仕事にしか取り組まなくなります。
つまり、社員が成長しない原因は、社長自身にあるのです。
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