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マネジャー:確かに、意識すれば、予期しなかった結果は、沢山ありますね。ご提案先の複数のお客様が、弊社製品にない機能や、これまではあまり重視されなかったようなサービスを突如要求されることがあります。最近で言えば「機器導入サポート体制」「海外展開時のサポート体制」については、これまで以上に具体的に質問をされるお客様が増えました。

老教授:そういう「予期しなかったこと」について、率直にあなたはどう受け止めますか?

マネジャー:正直に言えば、面倒ですし、あまりポジティブに向き合えてはいません。こちらの提案のまま、購入・使用してもらえたら、業績的にも助かるので……。

老教授:それが普通の感情です。ドラッカーは、「予期せぬ成功や失敗は腹が立つ」と言います。自分たちの「想定の枠」から外れたことがつきつけられるわけですから。

マネジャー:しかし考えてみれば、自分たちが考えていたことと、お客様の考えに大きなズレがあるから、「予期しなかった」結果になるわけですよね。その「ズレ」っていうのは、重大ですね。

老教授:そのとおりです。「予期していなかったこと」が表しているのは、まさに「企業サイド」と「社会、市場、顧客サイド」の間の「認識の断絶」です。その断絶に気付き、手を打つことで、資源をより生産的に活かすイノベーションが可能になります。ドラッカーはその重要性をこのように語っています。

「予期せぬ成功は機会である。しかしそれは要求でもある。正面から真剣に取り上げることを要求する。間に合わせではなく、優秀な人材が取り組むことを要求する。マネジメントに対し、機会の大きさに見合う真剣さと支援を要求する。」
(「イノベーションと企業家精神」より)

マネジャー:企業側が「数字に現れる結果」を急ぐあまり、イノベーションにつながる重大なサインを見落とすことがある、ということですね。

老教授:そのとおりです。ドラッカーは、1930年代のIBM社とユニバック社のコンピューター販売の例をよくあげていました。一般企業の「給与計算用にコンピューターを使いたい」という予期せぬ要求に対して柔軟に応えたIBMと、自社の想定した複雑・高度な利用方法にこだわったユニバック。この差が、コンピュータービジネスでの両社の明暗をはっきりと分けたと。

マネジャー:ユニバックの気持ちも理解できます。こちらの想定と異なるものにお客様の側の需要が変化して行くことは、怖いものです。