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老教授:現代企業は、何かを新たに始めるより、旧くて重要性が下がっていることを「ストップ」させるだけでも、資源が活かされる可能性が高いです。ドラッカーはこう言っています。

「イノベーションの戦略の一歩は、旧いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守る為に時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる。」
(マネジメント〔エッセンシャル版〕より)

マネジャー:新しい手を打つことにばかり気をとられて、仕事の見直しや廃棄はなかなかできていません。

老教授:新しいことに着手するよりも、まず不要なものを思い切って「廃棄」「廃止」できる人が真のリーダーです。実際、その方が何倍も勇気が必要で、覚悟が問われるのです。

マネジャー:確かに、行ってきたことをやめることは勇気がいりますね。ただ、先生の話を聞いて、過去にそういう勇気ある上司がいたことを思い出しました。彼は、「今集中すべきはこっちだ。これとこれは、一切考えなくてよい。こっちにエネルギーを集中してくれ」という明快な指針を出せる人でした。部下としてもすごくやりやすかったし、燃えましたね。必ず結果を出そうと。

老教授:社員の業務時間やエネルギーも重要な「資源」です。それを特に重要なことに「集中」させるために、「その仕事は、その業務は、今後もやり続けるべきか?」を問うことが、マネジャーには求められます。

「変化」をビジネスに活かす

マネジャー:なるほど……。では次に、もう少し具体的な質問をさせてください。前回、「顧客を創造する為に、企業は2つの基本的な機能を果たす。それがマーケティングとイノベーションだ」というドラッカー氏の言葉を教えていただきました。マーケティングは「顧客にとっての価値」に着目することが重要とのことでした。イノベーションも、同様でしょうか。

老教授:イノベーションは、顧客さえもまだ知らない、未来の「価値」を創ることを主目的とします。したがい、注目すべきは、「変化していること」「変化の種」です。変化に着目し、将来顧客にとっての価値になることを創り出すのです。

マネジャー:変化に着目するということですか。

老教授:ドラッカーは、イノベーションの手法面について、こう言っています。

「イノベーションとは、企業家に特有の道具であり、変化を機会として利用するための手段である。」
(「イノベーションと企業家精神」より)