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マネジャー:今まで描いていた壮大なイノベーションのイメージとは違いますね。

老教授:ドラッカーは、このように言っています。

「イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。それどころか、イノベーションが資源を創造する。」
(「イノベーションと企業家精神」より)

マネジャー:技術的な革新、あるいは、金額的なインパクトが大きい取り組みでなくても、「イノベーション」と言えるのですね。

老教授:もちろんです。今ある資源に、新たな富を創造する能力を与えてあげることがイノベーションです。また、これまで資源として認識されてこなかったものにも、新たに資源としての力を宿すこともイノベーションです。技術革新や大規模な投資を伴ったものに限ったことではありません。

マネジャー:定義が明快になると、「焦点」が定まる気がします。たとえば、これまで営業活動をしていなかった女性社員から希望者を募り、新商品の営業やマーケティング活動に参加してもらう案を考えています。これなんかも、まさに「資源」を新たな方法で活用して、富を創造することになりますよね。

老教授:そのとおりです。そういった優秀で意欲の高い女性社員の能力や時間という「資源」を、新しい富を生む活動に振り向けるわけですから。

マネジャー:トップダウンでなくても、現場に意識が芽生えればイノベーションの種は沢山ありそうですね。

老教授:グーグル社など、本当にイノベーティブな企業は、イノベーションがトップダウンではなく、現場から沸き上がってくるものであることを知っています。

マネジャー:なるほど。「我々が持つ資源を、どうすればお客様への価値にもっと変換させられるだろう?」という問いを部下たちと一緒に考えれば、面白いアイデアが生まれてきそうです。早速実行します。

まず「廃棄」から

老教授:良かったです。しかし、実行に移る前に、大切なことを伝えておきます。イノベーションのために最初にすべきことは、「廃棄」だということです。

マネジャー:捨てるということですか? イノベーションの「生み出す」というイメージと正反対ですね。

老教授:あなた自身も、部下の方も、既に多くの仕事に追われていますね。いわば、コップの中に水がギリギリまで入っている状態です。そこに、新しい施策を追加しても、資源を浪費するだけで、何かを集中して生み出すことは難しいでしょう。

マネジャー:確かに業務量は多く、パンク寸前です。