全6169文字

老教授:本当の意味で、「顧客の創造」が実現できてくると、お客様も社員も、ひいては株主も、結果として幸福になります。だから、企業が目指す「焦点」はそこに当てるべきなのです。

モチベーションを高めるシンプルな原則

マネジャー:先生、私自身はとても共感できるのですが、社員はそこまで意識できないと思います。昨今の業績低迷や全社的な締め付けで、かなり社員のモチベーションが低下しています。まず、モチベーションを高めなければ「顧客の創造」という話もできなさそうです。

老教授:あなたは、部下のモチベーションを高めるためには何が必要だと思いますか。

マネジャー:専門機関が設計した社員モチベーションサーベイを実施しながら、専門の研修会社に依頼し、モチベーション向上の施策を打ちたいと考えています。そういう具体的な施策が必要だと思います。

老教授:それでは、いつまでたっても本当の意味で部下のモチベーションは高まらないですよ。

マネジャー:どういうことですか。モチベーションは人間心理にかかわること。専門家に依頼することが最善策ではないのですか。

老教授:いきなりそこに依存すると、時間もかかる上に効果も上がりません。社員のモチベーションは、まず、日々の仕事の中で高めていくことです。

マネジャー:そういう考え方があるなら、ぜひお聞きしたいですね。

老教授:ドラッカーはこのように言っています。

「部下のモチベーションを高める最良の方法は、仕事を生産的にしてあげることである。」
(「マネジメント」より)

マネジャー:先生…、「生産性」という言葉にこそ、社員は辟易としていますよ。これまでより短時間で、多くのアウトプットを生み出せ、という話ですよね。情報化、効率化、時間短縮…現場は、まさにその圧力でモチベーションが低下しています。

老教授:「生産性を高める」ではなく、「部下の仕事を生産的にしてあげる」と言っているのです。あなたは、この言葉の意味を誤解しています。分かりやすいように、逆に「仕事が生産的になっていない」状態を考えてみてください。