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真面目な話し合い、やっていますか?

 「真面目な話し合い」は、キャリア発達心理学者のエドガー・H・シャインが、今から40年以上前に、キャリアの壁を乗り越える上での手段の1つとして提案したもの。

 キャリア発達の第一人者でもあるシャイン博士は、20代や30代前半のキャリア初期から中期は、他者、特に上司の手ほどきが重要になるが、経験知と心理的資源が豊かな40代では、自ら建設的な対処を行わない限り、真の解決につながらないと説いた。

 「真面目な話し合い」を提案したとき、多くの人たちは、「カウンセラーや専門家のいない中で、話し合っても意味がない。負の感情の分かち合いでしかないし、ただの相互依存にしかならない。『盲人を導く盲人』のようなものだ」と、批判した。

 ところが実際に「真面目な話し合い」を経験してもらうと、各々のやり方で、それぞれの問題に具体的な行動が喚起され、小さな適応が認められたのである。

 「若いときから続けてきた妻との月1回のデートがめんどくさくなった」という話を聞いた男性は、「出張の帰りに、妻とレストランで待ち合わせをしてみよう」と思いついた。この男性は、その頃、子どもが独立し、妻との生活が“変化”し、妻と衝突が増えたことに悩んでいたそうだ。

 また、ある人は、「真面目に話し合うことの心地よさ」に気付き、毎朝犬の散歩に夫婦で出かけることを日課にし、散歩の時間を夫婦の真面目な話し合いの時間にした。

 どれもこれも彼らが直面している多次元的な問題を、100%解決させるものではない。だが、同世代の他者の経験を知ると、自分が直面する変化に少しだけ適応するためのアイデアが浮かぶ。

 同世代のリアルな声が、自分の“今”を見つめる拡大鏡となり、進むべき道の輪郭が浮かび上がる。

 スイスの精神科医・心理学者で分析心理学の創始者として知られるカール・グスタフ・ユングは、40代からの人生を“人生の午後”に例える一方で、「個性化」という過程に踏み出せば、危機を乗り越えることができると主張した。で、「個性化」に向かうには、その前提として、「危機を危機と認識」し、「現実を受け止める勇気」を持つことが重要だと説いた。

 「個性化」とはこの先の自分の姿、すなわち自己概念であり、アンチロールモデルがちらついたときに「危機は危機と認識」される。そして、「現実を受け止める勇気」は、同世代の人たちとあれこれ真面目に話すことで持つことができる。

 そういえば若いときには、「真面目な話なんて、ダッサ~」などと毛嫌いしていたっけ。甘えたおばさん女の子も、「え~っ、真面目に話すの~?」と、キャッ、キャッはしゃぐのだろうか。……ふむ。気をつけよう……。