全5492文字

アンチロールモデルを追っているだけでは未来はない

 それは道の輪郭を自ら作るための行為だったんじゃないか、と。一見矛盾しているようだが、多次元的に起こる変化と向き合うために、新たな次元を増やすことで、正解を見つけようとしたのではないか、と。将来への足がかりとなる「自己概念」を見いだすために、だ。

 そもそも人は誰しもが、深層心理の中に「自分自身に対するイメージ=自己概念(self-concept)」を持っていて、自己概念は、将来の行動や意志を左右し、その人自身についての新たな知識の獲得を方向づける一種の理論のような働きをする。

 自己概念は、それまでの人生経験や周囲の言葉、教えなど、自分を取り巻く環境によって形成され、私たちは無意識に周囲に様々な働きかけを行いながら、形成された自己概念を維持している。

 つまり、アンチロールモデルの脅威に流され、「なりたくない自分になってしまった」途端、それを正当化する“新たな自分”が現れる。自分の姿に居心地の悪さを感じながらも、「仕方がない」と受け入れてしまうのだ。なので、何がなんでも流されないように耐えなければならない。たかが自己概念、されど自己概念。なんともやっかいな代物なのだ。

 いずれにしても、アンチロールモデルを批判するフェーズから、将来の自己概念形成のフェーズに進まない限り、理想論だけの“おばさん(おじさん)評論家”に成り下がる。

 では、どうするか? そこで大切にしたいのが、「真面目な話し合い」だ。

 ただただ、同世代の人たちとざっくばらんに、真面目に話す。真面目な話し合いだから、不真面目はダメ。ただの話し合いだから、会議とか研修でもない。

 子どものこと、夫のこと、妻のこと、父親のこと、母親のこと、部下のこと、同期のこと、上司のこと、さらには自分自身のこと……。そんな自分を取り囲む人間関係の中で起きている出来事を、ひたすら真面目に話す。それが、自己概念の修正と形成に役立つと共に、直面しているさまざまな問題に、小さな適応をもたらすのである。