第1に最も基本的なこととして、「創造性」と「イノベーション」は別ものであることを理解した上で、自社の問題が「創造性の欠如」なのか、「創造性→実現の橋渡しの欠如」なのかを把握することです。もちろん「うちの会社は両方足りない」という方も多いでしょうが、これまで述べたように、どちらが欠如しているかで、打ち手は全く逆になるのです。

 例えば「うちの会社はアイデアが足りない」と思っていても、実は社内のエンジニアやクリエイターはそこそこ創造的なのに、彼らが社内で強い結びつきを持っていないために、実現化に至っていないだけの場合もあるはずです。このように、日本企業のイノベーションを考えるうえでは「創造性」と「イノベーション」の峻別が必要で、そのうえで自社を見つめ直すことが肝要なのです。

チャラ男と根回しオヤジのコンビこそ、最強

 第2に、もし自社の問題が「クリエイティブな人が足りないことにある」と判断したら、社員が「弱い繋がり」を社内外に伸ばせるサポートをしてやることです。実際、近年増えているIT(情報技術)系のベンチャー経営者の中には、日頃から異業種交流会や勉強会に参加する人が多くいます。これは典型的な「弱い繋がり」を作る行為です。

 それに比べると、既存の大企業や中堅企業のエンジニア・クリエイター・企画部門の社員らはどうしても内にこもって組織に埋もれがちです。先のIT経営者のようなことをすると「チャラチャラしている」と冷ややかに見られるかもしれません。しかし、そういう方々こそなるべく社外に出て、あるいは社内でも部門間の垣根を超えて、弱い繋がりを多く作ることが、組織として創造性を高めるのに不可欠なのです。

 しかし第3に、この弱い繋がりをもった創造性の高い人を「アイデアの実現化」まで橋渡しするには、全く異なるサポートが必要になります。もちろん弱い繋がりを持つ人自身が強い繋がりも持って社内の根回しをできればいいのですが、人間はスーパーマンではないので、これは簡単ではありません。

 そもそも仮に強い繋がりを多く持っても、先のペリースミスの研究にあるように、それが今度はその人のクリエイティビティーにマイナス効果をもたらす可能性もあります。そうなっては本末転倒です。

 私は、この問題の解消には、人と人の「ペアリング」やチームのメンバー構成を工夫することが重要と考えます。例えば開発チーム内で「弱い繋がりを持つ開発者は、強い繋がりを持つ監督者とペアを組ませる」と言った組み合わせです。

 フットワークが軽くて弱い繋がりを持つ開発者が、やがて創造性を高め、結果として有望なアイデアを出したら、今度は強い繋がりで根回しにも長けた上司がそれを実現まで持って行くのです。もちろんこれには、その上司が「チャラ男」の創造性を理解できることが条件になります。

 今、日本企業に求められているのは、チャラ男と、根回し上手な上司のコンビなのです。

注)本稿の執筆に当たっては、早稲田大学ビジネススクールMBA学生の齊川義則氏と早川喜八郎氏から、有用なヒントをいただきました。ここに謝意を評します。

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