このように考えると、「幅広い人々からの多様な情報が効率的に流れる」のは弱い繋がりのネットワークの方で、したがって新しい知の組み合わせを求めるのに適しているのです。

「チャラ男」の方が、クリエイティブになれる

 そしてこれまでの多くの実証研究で、「弱い繋がりを多く持つ人は、創造性を高められる」という命題を指示する結果が多く得られています。例えば、拙著『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)で紹介したのは、エモリー大学のジル・ペリースミスが2006年「にアカデミー・オブ・マネジメント(AMJ)」に発表した論文です。

 この論文でペリースミスは、アメリカの某研究所96人の研究員を分析対象とし、各研究員が所内でどのくらい「強い繋がりの人間関係」と「弱い繋がりの人間関係」を持っているかを調べました。そして、上司が評価する各研究員の創造性スコアとの関係を統計分析したところ、やはり弱い人間関係を多く持つ研究員の方が、創造性スコアが高くなったのです。他方で、「付き合いの長さ」で図った強い繋がりの人間関係を多く持つ人は、むしろ創造性が落ちるという結果となりました。

 似たような結果は、ほかの研究でも得られています。ネットワーク研究の世界的権威であるケンタッキー大学のダニエル・ブラス等5人の研究者が2009年に『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』に発表した論文では、中国のハイテク企業151人の従業員の人間関係を使ったデータを用いた統計分析から、弱い繋がりをある程度の数まで持った従業員の方が、創造性が高まるという結果を得ています。

 この主張は、職人気質の強い日本企業の開発部門などでは受け入れにくいかもしれません。あちこち色々なところに顔を出したり、異業種交流会・勉強会に頻繁に参加したり、名刺を配って人脈を広げることは、日本では「チャラチャラしている」といったイメージを持たれがちです。しかし、これまでの研究結果が示すように、そういうフットワークが軽い人こそ、実は長い目で見ると多くの「新しい知の組み合わせ」を試し、創造性を高めている可能性があるのです。

クリエイティビティーとイノベーションは違う

 ここからが本稿のポイントです。では弱い繋がりを多く持って創造性を高めれば、それがそのままイノベーションに直結するかというと、実はそうではありません。

 そもそも創造性とイノベーションは、学術的にも実務上でも、互いに異なる概念です。なぜなら、いくら創造的で新しいアイデアでも、それが製品化・会社での導入・特許化など、実際に利用されなければ「イノベーティブ」とは言えないからです。

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