この「新しい知の組み合わせ」の手段についても、経営学には多くの研究成果があります。中でも経営学者が重視するのは「人の繋がり・人脈」、すなわち人のネットワークです。今回は中でも1977年にスタンフォード大学のマーク・グラノベッターが提示して以来、世界のネットワーク研究の中心命題となっている「弱い結びつきの強さ(Strength of weak ties)」に焦点を当てましょう。

なぜ弱いつながりの方が優れているのか

 人脈・友人関係など「人の繋がり」には、強弱があります。例えば親友同士は「強い繋がり」で、ただの知り合い同士は「弱い繋がり」です。直感的には強い繋がりの方がメリットが大きそうですが、実はこれまでの社会学・経営学の研究蓄積により、「新しい知の組み合わせには、むしろ弱い繋がりが効果的である」ことが、経営学者のコンセンサスになっているのです。これは、2つの理由に基づきます。

 第1に、弱い繋がりからなるネットワークは、全体的にムダが少なく効率的です。例えば、AさんとBさんがただの知り合い(弱い繋がり)で、AさんとCさんもただの知り合いだとすると、もともと繋がっていないBさんとCさんが知り合う機会はほとんどありません。結果として3人の関係は、BとCが繋がらないままの、一辺の欠けた三角形になります。

 ここで、この「一辺の欠けた三角形」が数多く繋がっているネットワークを想像してみて下さい。このネットワークは、全体に隙間の多い、スカスカしたネットワーク(Sparse Network)になるのがイメージできるでしょう。このネットワークでは、全体として情報波及の効率が高くなります。なぜなら、そのネットワークの端にいるAさんから反対側の端にいるZさんに情報が届くのに、重複するルートが少なくて済むので、ムダがないのです。

 これに対して、Aさん=Bさんが親友同士でAさん=Cさんも親友同士だと、BさんとCさんもやがて知り合う可能性が高く、結果としてA=B=Cの完成された三角形ができます。そしてこの完成された三角形が多く繋がることでできるネットワークは重層的(Dense Network)で、情報がAさんからZさんに届くまでに重複するルートが多すぎて、ネットワーク全体としては情報波及の効率が悪いのです。

 第2に、弱いネットワークは簡単に作れます。誰かと親友になる(強い繋がりを作る)のには時間がかかりますが、取りあえず名刺交換してメールをするくらいの関係になるのは、それほど難しくありません。結果として弱いネットワークは遠くまで伸び、そこには多様な知見・背景を持った人ますから、そういった人たちと弱いネットワーク上で繋がれるのです。

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