●人事部長:「普通の営業が100件商談をすると受注できる数は6~7件です。しかし横塚は100件訪問したら30から40件は決めてきます。有り得ない数字です」

○社長:「効率がいいから行動量は案外少ない。あくせくせず短期間で契約を取ってくるから後輩は憧れているようだが、とても真似できない」

●人事部長:「真似も何もコミュニケーションが成立しないでしょう。横塚の話が本当に分かるのは会長だけじゃないですか」

「正義と愛を唱えてどうして注文が取れるのだ」

○社長:「そう、親父だけだ。うちの会社を創業した当時、親父の営業力は驚異的だったと古参社員から聞いたことがある。君、親父の口癖を知っているか」

●人事部長:「『正義』と『真実の愛』でしたね」

○社長:「ああ。否定はもちろんしないが肯定もできん。正義と愛を唱えてどうして注文が取れるのだ」

●人事部長:「横塚は『真心』と『感謝』、そして『愛』があれば結果は出る。そればかり言っています。私のような凡人はとてもついていけませんが、会長とは意気投合していますね」

○社長:「親父の話相手をしてくれるのは助かるが、部下にしてみたらたまらないだろう。横塚の下についたら苦労するのは目に見えている」

●人事部長:「下手をしたら潰れてしまうかもしれませんね。しかし、その一方で人事責任者の私としては横塚にそれなりの報酬を出すべきだと思っています。そのためには当社の人事制度上、課長に上げないといけません」

○社長:「そういうことになるな。彼を特別扱いする制度を作るつもりはない。よし、最年少課長にしよう。部下も4人ぐらいつける。そのかわりというわけではないが、横塚には営業管理システムをきちんと使ってもらう」

●人事部長:「横塚は超アナログ派ですよ。若いのに電子メールもスマートフォンもほとんど使いません」

○社長:「知っている。私が電子メールを出すと電話で返事をしてくる」

●人事部長:「パソコンに向かっている姿は滅多に見かけません。見積もり資料や提案資料はアシスタントに作らせています。彼女たちに頼むのはうまいです」

○社長:「資料作りはそれでかまわないが、当人と部下の営業活動の実態を示すデータをきちんと記録してもらう。私が社長になってから、客観的な事実をデータベースに蓄え、そのデータを参考にしてロジカルに物事を決めていくと宣言した。これには従ってもらう」

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