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マネジャー:なるほど。グーグルが業務時間の約20%を、既存業務に関係のない、新しい価値を生み出す活動にあてさせていることは有名ですよね。他にも、大企業、中小企業を問わず長く発展している企業は、新しい価値の創造や人材の育成に、しっかり時間を投資している気がします。

老教授:そうすることで、結果的に、安定して業績も伸びていきやすいというのがマネジメントの原則です。

利益は目的ではない

マネジャー:ありがとうございます。マネジメントとして何を基準に仕事を設計していくのがよいか、見えてきた気がします。最後にうかがいたいのですが、現場において「利益」は一体どのように考えていけばよいのでしょうか。

老教授:重要な問いですね。利益という不可欠なものを、マネジャーがどのように認識していくかはきわめて大切です。一言で言えば、ドラッカーは、「利益は目的ではなく条件である」と言っています。彼の有名な言葉が、これです。

「利益は、個々の企業にとっても社会にとっても必要である。しかしそれは、企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である。企業活動や企業の意思決定にとって、原因や理由や根拠ではなく、その妥当性の判断の基準となるものである。」 (「経営の神髄」より)

マネジャー:利益は目的ではなく条件、ですか。

老教授:そうです。利益は目的とすべきものではなく、事業目的を実現するために必要な条件であるという捉え方です。今後起こりうるリスクに備えた原資でもあります。

マネジャー:しかし、利益を明確に目標指標としていかなければ、組織が迷走するということはありませんか。

老教授:確かに利益があがるというのは、社員にとって励みになります。ドラッカーが言うように、利益が出ているかどうかは、「妥当性の判断」材料です。顧客にとって魅力のあるものを、妥当な価格で、コストをおさえて販売できたことの結果が利益ですから。

マネジャー:では、なぜ利益を目的にすることが間違いなのでしょうか。

老教授:「利益をあげる」ことが第一目的になっている会社は、徐々に顧客からの、社会からの支持を失っていくからです。ドラッカーは、このようにも語っています。

「利益の最大化のみを目的化する企業は、短期的視点からのみマネジメントされるようになる。その結果、企業がもつ富の増殖機能は破壊されないまでも、大きく傷つく。結局は業績が悪化していく。しかもかなり速く悪化していく。」(「ポスト資本主義社会」より)

マネジャー:富の増殖機能が傷つく…。

老教授:利益管理、数値管理が現場の「目的」になってしまう結果、本来その会社が持っていた「富の増殖機能」の向上に社員が時間を使わなくなり、顧客にとっての魅力も下がっていくリスクを言っています。