全3896文字

「遅い」「覚えない」はNGワード

著書では、「何をやっても遅い」「何度言っても覚えない」など、「5つのNGワード」を挙げています。

﨑山:先ほど申し上げたように、一生懸命やっていても筋力が低下すると何をするにも時間がかかってしまう。そんな状況を自分でも歯がゆく思っているところに、「何をやっても遅い」と非難するのは酷です。

 「何度言っても覚えない」というのも、記憶力の低下が理由です。これも本人がある程度自覚しているのに指摘すれば、怒りを倍増させるだけです。そんな叱責をするくらいだったら、メモ帳を贈ってメモに書いて忘れないようにしてもらえばいいのです。

仕事が遅いとか、覚えないといった言葉は、若手の新入社員に対しての叱責と同じですが、意味合いは随分と違うようですね。

﨑山:そうなんです。20代が「遅い」のは知識や経験が不足しているからですし、「覚えない」のは覚える気がないか、覚え方が分からないから。覚えたけど、すぐに忘れる60代とは異なります。

 それから、年下上司がよく使いがちなNGワードが、「すみませんが、私のためにこのコピーを取ってきてくれますか」といった「私のために~してください」という言葉です。

 定年まで勤め上げてきた人たちは組織のことをよく分かっていますし、人一倍、組織のために働いてきたという自負があります。そんなところへ「私のために」とお願いしたりすれば、「仕事はあんたのためにやるんじゃない、組織のためにやるんだ」と腹を立ててしまいます。

うかがっていると、シニア世代の活用というのも、ダイバーシティーの1つだということが分かってきました。定年延長や再雇用で、職場では今後シニア層がどんどん増えてきます。この人たちが活躍できるような環境を作れなければ、企業にとっては大きな成長阻害要因となりますね。

﨑山:60歳新入社員の活用は、多様な人材が活躍できる組織にするというダイバーシティーの考えとまさに合致します。シニアを雇用することで若年層の雇用が圧迫されるという見方があります。一部でそういう面があることは否定しませんが、若年層に求められる仕事や役割と、シニアに求められる仕事や役割は異なります。

 例えば営業活動で言えば、行動力がある若手は新規開拓の訪問回数をこなし、経験が豊富なシニアは最後の成約の部分で力を発揮する。そのようにうまく役割分担することは可能です。

 定年後の再雇用や雇用延長の場合、賃金は7割になったり、半減したりします。だからと言って、企業は働きもそれまでの7割や半分でいいと考えてはいけません。今までどおりの働きをしてもらうため、いかに効率的に、疲れずに働いてもらう環境を作るかを考える必要があります。