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やはり30~40代の上司には、年上部下とは付き合いにくいという意識があるのでしょうか。

﨑山:企業の研修などに出向いてお話をすると、年下上司の方もそうですし、若い人からも「シニアの人たちとうまくコミュニケーションが取れない」という相談を受けることはよくあります。でも、逆に「年上部下」の人たちは、部下となることについてあまり気にはされていないんですよ。

 東京都産業労働局が2013年3月に発表した「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」に「定年時に自分より役職が下位であった者の部下または同僚として働くことにストレスを感じますか」という質問項目があります。その回答を見ると、17.6%が「全く感じない」、53.2%が「あまり感じない」となっています。つまり、70%以上はさほど気にしていないということです。

 私自身も話を聞く機会がありますが、同じような傾向です。昔のように「年下の上司に使われるなんてまっぴらだ」なんて人は今はもうほとんどいないですね。

「やる気がない」のではない

それでは、実際に60歳新入社員を活かすにはどんなことに気を付ける必要がありますか。

﨑山:60代の心身の変化、つまり「老化」をきちんと理解することが重要です。年齢による体力の低下や疲れやすさ、それが原因となった能力の低下について、60歳新入社員本人でさえ気付いていないこともよくあります。

 上司や同僚も、老化による視力や筋力、記憶力の低下を考慮せずに仕事を任せ、うまくできないと「やる気がない」と精神論で叱責してしまう。やる気の問題ではなく、体が疲れてしまって気持ちがついてこなくなっているのです。精神論で説くのは一番まずいやり方です。

 例えば、スーパーや飲食店のレジなどで、シニアの従業員がお釣りを渡すのが遅いと感じたことはありませんか。それはやる気がないというような問題ではなく、筋力が衰えてきているため時間がかかってしまうのです。

 ほかにも、若い時には分かりませんが、つるつるとした紙に書かれた文字は蛍光灯の下だと反射して見えにくかったり、30分も同じ姿勢で座っているのは苦痛だったり、視力や筋力の低下によっていろいろな影響が出てくるものなんです。

 スマートフォンやタブレットも、シニアには使いづらい面があります。液晶画面上を指でなぞろうとしも反応しにくい。これは指先が乾燥してしまうからなんです。ですから、ハンドクリームを塗れば解決します。そういう老化に伴う現象を理解し、うまく対応すれば影響を軽減することも可能です。