安西:それでは極真の知名度はどうですか?

後藤:日本で極真空手を始める人の大半は極真空手の名前を事前に知っています。特に一昔前までは劇画の『空手バカ一代』の影響が強く、極真空手を習うために入会した人がほとんどです。

安西:アメリカでは当然極真を知っている人は少ないのでしょう?

後藤:空手の知名度は高く、一般のほとんどの人が知っていますが、極真や松濤館といった流派の名前を知っている人はあまりいません。そのためにNYで入会する人たちの多くは事前にいくつかの道場を見学し、クラス内容、インストラクターの技量、人柄、道場の設備など比較した上で、この道場に入門すると判断します。

空手の派手な技が好まれるのは世界共通

流派がハイブリッド化する?

安西:流派そのものに対する考えも違うでしょう?

後藤:日本では一度空手を始めると、ずっとその流派内で空手を続けることが多いです。一つの道を極めることが大切と考えます。それに対し、アメリカでは流派に対するこだわりがあまりないので、他の流派に関心があれば比較的簡単に移ります。

安西:そうすると、流派間の交流を促すでしょう。

後藤:現在の日本においては各流派で大会が整備されているので、それに基づいて徹底的に技術を磨いていくという考えの道場が多いです。逆にアメリカでは競技がそれほど発達していないことや護身術に対するニーズも強いため、ルール内での稽古だけでなく、様々な技術を取り入れ、様々な状況を想定して指導をする力量が求められます。

安西:自然とハイブリッド志向になるわけですね。

指導者のポジションがちがう

安西:指導者に対する見方はどうですか?

後藤:日本の空手社会においては上下関係が非常に強いので、先生の言うことには黙って従うのが基本です。アメリカでは、指導者の言うことでも理解出来なければすぐに質問するし、納得出来なければ従わない。過去の経歴や実績より、現在の実力や人間性によって評価されることが多いです。まず技量の差を示すことが、その後にいい関係を築く秘訣です。

安西:年齢、性別による違いはありますか?

後藤:稽古は通常、年齢や性別に関係なく一緒に行うことが多いです。しかし、格闘技なので指導者は年齢や性別による体力差に配慮します。日本ではそれを区別しても、さほど問題ではない。特に最近は女性や社会人が増えてきているので、女子部や壮年部という分け方も珍しくないです。

安西:米国では通用しにくそうですね。

女性も防具なしのフルコンタクト制を採用

後藤:はっきり区別をするのは問題です。子供のクラスを指導している時に、泣いている男の子に対して「男なら泣くな」と言うと、女の子から「何で男の子は泣いちゃいけないの? 泣くことと男女とどういう関係があるの?」と質問されたことがあります。

安西:女の子からですか。それは男の子は助かる。安心して泣ける(笑)

後藤:海外から日本に女子の大会が逆輸入をしたのも、こういう背景があるかもしれません。極真の創始者である大山倍達総裁は、女性は空手を稽古しても、試合はしない方がいいという考えでした。それでも一部の国では女性の大会も開かれていたようで、1996年にはNYに於いて第一回女子世界大会が開催されました。

 これを機に日本でも女性の全日本大会が行われようになり、女性で空手を稽古する人口が飛躍的に増えました。それと同時期に青少年や壮年の大会も行われるようになったこともあり、稽古をする人たちの層が広がり、だいぶ道場の雰囲気や稽古方法も変化しました。

安西:米国でローカライズされたものが逆輸入して、日本の本流に影響を与えたわけですね。

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