この「スパイキーな国際化」の分析は端緒についたばかりであり、さらなる研究が求められます。しかし、これは今興隆している多くのスタートアップ活動やVC投資がそうであるように、ビジネスが情報集約型になって人と人の密な交流が重要なほど、「国と国」という広すぎる単位でグローバリゼーションを捉えることにそもそも意味がなく、「ある都市と別の国(のある都市)の間の関係」という視点が重要になることを示唆しています。

単純な「グローバル化論」に惑わされないために

 今回は、世界の経営学で示されている「グローバル化」について、我々が持っている感覚的な通念を打ち破る研究成果を紹介してきました。「グローバル化」と聞くと、私たちはどうしても、「世界がまるで一国のように繋がって」「世界中で万遍なく取引され」「国と国の距離は縮まっている」と思い込みがちです。しかし、冷静にデータを分析していくと、そのようなグローバル化の捉え方は単純にすぎるのです。

 このようなグローバル化の事実は、我々のビジネスを考える上でも示唆を与えてくれるはずです。例えば、先のゲマワットはAAAという企業分析のフレームワークを提示し、国際化する企業は「特定の国への集積」「それぞれの国への適応」「国の違いを生かした裁定」の3つを活用することが重要と述べています(注3)。これは「世界が完全なグローバル化にはほど遠い」からこそ生まれた考え方です。

 また、VCのように人と人の密な交流が重要な分野で「スパイキーな国際化」がさらに顕著になるなら、「他のどの国にビジネス展開するか」ではなく、「自分がどの都市にいて、海外のどの都市でビジネスを展開するのか」という視点がより重要になるはずです。

 これら3つの事実が、みなさんの「グローバルな」ビジネスを再考する上で、何らかのヒントになれば幸いです。

注1:Frankel, J. A. (2001) Assessing the Efficiency Gain from Further Liberalization. In Porter, Roger B., Pierre Sauve, Arvind Subramanian & Americo Beviglia Zampetti, (eds.) Efficiency, Equity, and Legitimacy: The Multilateraltrading System at the Millennium. Brookings Institution Press: Washington, D.C.
注2:Gompers, P.A., Lerner, J. (2004) The Venture Capital Cycle. MIT Press: MA.
注3:Ghemawat, P. (2007) Redefining Global Strategy. Harvard Business School Publishing: MA

■変更履歴
本文中で「米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の経済学者ジェフリー・フランケル」としていましたが、米ハーバード大学の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/11/25 16:19]

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