そもそもVC投資というのは、ローカル化する傾向があります。なぜなら、ベンチャー・キャピタリストは投資先を選定するために投資候補の起業家に何度も会う必要がありますし、投資後も頻繁に投資先企業の経営をチェックし、経営指導することもあるからです。人間同士の密な交流を必要とするビジネスなのです。

 したがってベンチャー・キャピタリストは、距離が近いスタートアップに投資しがちです。ハーバード大学のポール・ゴンパースとジョシュ・ラーナーの推計によると、米国はあれほど広大なのに、スタートアップ企業とそのリーディング・インベスターのベンチャーキャピタル(VC)企業の距離の中位値はわずか94キロしかありません(注2)。この近接性を好む傾向により、シリコンバレー、ボストン、シアトルなどの特定の地域にVC投資が集中する「スパイキー化」が起きるのです。

 ところが近年になって、米国から海外へのVC投資や、逆に海外VC企業の米国への投資が急速に増えてきています。これまでローカルでスパイキーだったVC投資で、グローバル化が進展し出したのです。

 この矛盾を説明するために、筆者たちは「スパイキーな国際化(Spiky Globalization)」という新しい国際化のパターンを提示しました。

これからはスパイキーなグローバル化が進む?

 これは「VC投資のような、情報集約型で人と人の交流を必要とするビジネスの国際化は、国と国の間で起きるのではなく、ある国の特定の地域と別の国(の特定の地域)で集中して起きるのではないか」という考えです。

 例えば、米国と台湾は近年VC投資や起業家の交流が盛んですが、これは米国全土と台湾全土で起きているのではありません。米国の中でもカリフォルニア州のシリコンバレーという極めて狭い地域と、台湾の新竹というこれまた狭い地域の間で起きているに過ぎません。

 この点を検証する端緒として、筆者たちは、米国の各州と世界各国のあいだのVC投資の流れを集計しました。そして、各州や各国のVC投資地域としての重要性をコントロールした指数(intensity indexといいます)を計算した結果、ある特定の米国の州と海外の特定の国の組み合わせで、指数が著しく高くなる傾向を見つけたのです。

 例えば先に述べたように、台湾と関係が強いのはカリフォルニア州です。インドはニューヨーク州との関係が特に強くなりました。イスラエルとニュージャージー州も非常に関係が強く、これは同国と同州で共にバイオ・ベンチャーが盛んなことが影響していると考えられます。

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