そしてゲマワットは、貿易、資本流出入、海外直接投資などあらゆるデータの傍証を持って、「世界の現状は、未だこのスペクトラム上の「鎖国側に極めて近い状態にある」ことを示したのです。仔細については論文を読んでいただくとして、ここでは中でもGDP(国内総生産)と貿易データを使った説明を紹介しましょう。

世界は、グローバル化していない

 ゲマワットは、現在(2014年)米ハーバード大学の経済学者であるジェフリー・フランケルが2001年に発表したデータ分析の結果を引き合いに出します(注1)。

 例えば、2000年の米国のGDPの世界GDP総計に占める割合は、約25%です。「世界の生産」の4分の1を米国が賄っているわけです。もしここで、世界中が1つの国になったような状態、すなわち「完全なグローバル化」が実現していたらどうでしょうか。

 この場合、世界中で完全なモノ・サービスの行き来があって分業が行われるので、米国は自国で生産する部分以外の全てを他国からの輸入で賄うはずです。すなわち「完全なグローバル」下では国内需要のうち75%は輸入となるはず、ということになります。

 しかし実際のデータをみると、米国の需要に占める輸入の割合はわずか12%前後です。同様に、日本は2000年時点で世界総生産のおよそ12%を占めていますから、理論的な輸入/GDP比率は88%ぐらいのはずですが、現実はわずか7~8%程度です。

 もちろんこの論法には幾つかの強い仮定があるのですが、とはいえ、現実の世界が「完全なグローバル化」からほど遠い状況にあることは明らかでしょう。ゲマワットはこのような傍証の数々をもって、「世界はグローバル化しておらず、あくまでセミ・グローバル化(中途半端なグローバル化)の状態にある」ことを明らかにしたのです。

世界は「狭く」なってきているか

 第2の勘違いは、「世界は狭くなってきている」という通念です。ビジネスにおける「狭さ」とは、国と国の間の「物理的な距離」が経済活動に及ぼす効果のことです。「国と国の距離の壁を超えてビジネスを行いやすくなっている」と感じるからこそ、「世界が狭くなってきた」という表現が使われるはずです。

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