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老教授:マネジメントとは機械ではなく、人間にかかわるものです。だからこそ、人間の持つ強みを発揮させることが何より大切です。また、個々人のレベルでは「弱み」であっても、組織やチームになると、その「弱み」自体が無意味になることがあります。ある人の弱みが、別の人の強みで補われるのが、健全な組織だからです。

マネジャー:なるほど。確かに、そうかもしれません。マネジメントをする人間として、いきなり管理を強化する誘惑に負けず、まずは人の強みに着目し、創造性を引き出していくことの大切さが分かりました。が、大事なことを最後に確認させてください。

老教授:もちろんです。遠慮なく、どうぞ。

人間中心のマネジメントは情緒的か

マネジャー:人の創造性を引き出す、強みを生かすというのは、理解できます。しかし、会社には利益を上げ、業績を高めていく使命があります。人間中心のマネジメントは、いかさか情緒的で、業績向上という会社の経済的な根幹条件と一致しないようにも聞こえますがいかがでしょうか。

老教授:大切なポイントですね。ドラッカーは、この人間の強みを生かすマネジメントが結果的に業績も高めることに確信を持っていました。それはなぜか、お話します。その前に、あなたは、知識労働者という言葉を聞いたことがありますか。

マネジャー:聞いた事はあります。肉体を動かすことで生計を得る人ではなく、営業や企画などのデスクワークを中心として仕事をする人、というイメージがあります。

老教授:必ずしも、ホワイトカラーが知識労働者で、ブルーカラーが違う、ということではありません。どのような職場環境であれ、専門知識や知恵を生かして、組織の成果に貢献する仕事をする人を「知識労働者」とドラッカーは呼びました。そして、この「知識労働者」が著しく増え、企業の業績に大きな影響を与える時代がくると、彼は早くから気づいたのです。

マネジャー:どのような影響でしょうか?

老教授:端的に言えば、「産業資本」、すなわち土地、設備、工場、機械などではなく、「知識資本」、すなわち社員の持つ斬新なアイデアや知識、知恵が競争を大きく左右する時代になる、ということです。産業資本で劣っている会社でも、知識資本が多ければ、あっという間に大手企業のシェアを奪えてしまう時代です。

マネジャー:それは私も感じます。これまで名前も聞いた事がなかったような小規模なベンチャー企業や中小企業が、ものすごいサービス・製品を生み出し、あっという間にシェアを奪われてしまうということが起きています。グーグルやフェイスブックなどは、元々「知恵」「人材」しかなかったわけですよね。優秀な人材が知恵と知識をすりあわせてサービスを創っているのが、まさに昨今の成長企業ということなのでしょう。

強みを引き出せば知識資本も高める

老教授:まさに、そうです。さらに、独自の知識というのは、その人の弱みからではなく、強みや資質から生み出されるものです。したがい、人の強みを引き出し、組織内で交わらせていくことが、現場の知識資本がますます生み出されるきっかけになるということです。

マネジャー:だから、強みを引き出していくことが、結果的に知識資本という重要な事業上の武器を高めてくれる、ということになるのですね。