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老教授:効率的に、多くの人の行動を統制させられるメリットはあります。しかし、管理依存には注意が必要です。管理依存になると、自分の頭で根本的な解決策を考える人が少なくなってしまいます。人間は機械ではありません。管理により、思うように動かそうとすればするほど、主体性は失われやすいのです。現代企業のジレンマかもしれません。

マネジャー:たしかに、わが社もしょっちゅう、制度やシステムの導入プロジェクトが走っています。もちろん、便利で有用だと思うものがある一方、「これがルールだから」ということで、社員が深く考えない言い訳に使われてしまっていることも否めません。

老教授:この問題意識は、ドラッカーが20代の頃から一貫して抱いてきたものでもあります。利益を効率的に生み出すための管理主義により、人間が生き生きと、自由・公正な環境で、創造性を発揮して、幸福に働くことができなくなってはいけないという問題意識です。

まずは指示より対話を重視する

マネジャー:ドラッカーの思想の原点はそのような問題意識にあったのですね。おっしゃっていることは、よく分かります。しかし、創造・創発を促すために、具体的に何から手をつけていけばよいのでしょうか。

老教授:まず、指示より対話を重視すること。そして、メンバーや部下個々人の「強み」「特有の資質」を見つけ、認めることから始めてください。「君の最大の強みは、こういうところだね」「あなたのここは、他の人ではまねができないストロングポイントだよね」と伝えることから始めるのです。

マネジャー:そうすると、何か違いが生まれるでしょうか。

老教授:創造性は、その人が持つ強み、特性から生まれます。強みが注目されれば、主体的・創造的に、弱みに注目されれば、他責的・受動的になるのが人間の性質です。

マネジャー:なるほど。こうして先生に言われるまでは、「強み」はあまり意識したことはありませんでした。毎日、問題やトラブルに追われていると「できないこと」「弱み」にばかり目がいってしまいますね。

老教授:特に日本の企業では、ほとんどの会社がそのような状態です。しかしおそらく、あなたが若くして成果をあげてこられたのは、何かしら「自分の強み」「資質」を生かしてきたからです。あるいは、それを生かすことを許してくれる上司に恵まれたということもあるでしょう。

「強みを発揮させ、弱みを無意味なものにする」

マネジャー:たしかに、特に30代半ばまでは、自分に合ったスタイルで仕事をさせてくれる先輩や上司、同僚に恵まれていたかもしれません。私自身、もちろん万能型ではないので、そのような恵まれた環境で「自分はこの力で勝負しよう」という前向きなスタンスをとれたことは間違いありませんね。

老教授:そうでしょう。ドラッカーはこう語っています。

「マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が恊働して成果を上げることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。」(「新しい現実」より)

マネジャー:「強みを発揮させ、弱みを無意味なものにする」ですか。