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老教授:ここが今日の大切なテーマになりそうですね。簡単に言えば、「管理」を強めれば、あなたが望む「社員が自分の頭で考え、行動する」という組織像からかえって遠のいてしまわないか、ということです。

管理職は管理する仕組みづくりが大事なのでは?

マネジャー:人が力を発揮できるようにするために、まずしっかりと管理できる仕組みをつくることがマネジメントの大切な仕事ではないですか。そうしなければ管理職としては失格ですよね。

老教授:マネジメントとは「管理」ではありません。「管理」とはコントロールのことです。

マネジャー:マネジメントをする上で、「管理」「コントロール」は不要だということですか?

老教授:そうではありません。ドラッカーの書籍『マネジメント』にも、「管理」という章があります。その「管理」に対応している原著の言葉は「Control」です。つまり、マネジメントには「管理」「コントロール」が必要です。例えば、安全に関する事や、自社の顧客サービスに不可欠なことなど、「これは必ず守る」という点についてはルールを明確にし、実行されるよう「管理」することが必要です。しかし、あくまでそれはマネジメントの一部です。マネジメント本来の仕事の中で管理が占める割合は3割ほどでしょう。

マネジャー:では、7割にあたる、マネジメントの本質とは何なのですか?

老教授:人間と組織の力を生かした、創造・創発活動です。人間の内部に眠る「創造性」「創発性」を引き出し、組織の目標に向けて束ねていくのがマネジメントの本質です。

「人に何かを生み出させること」

マネジャー:人間と組織の力を生かした、創造・創発活動…。人の力を引き出して目標に向けて束ねる…。

老教授:そうです。ドラッカーは、このように語っています。

「企業、政府機関、NPO(非営利組織)のいずれであれ、マネジメントの定義は一つしかありえない。それは、人をして何かを生み出させることである。」(「プロフェッショナルの条件」より)

マネジャー:人をして何かを生み出させること…。それがマネジメントの定義というのですか。

老教授:部下やメンバーが協働することで、何か価値あるものを生み出させる。それがマネジメントの本来の役割です。しかし、マネジメントを「管理」と訳してきたために、多くの日本企業でこの基本が忘れられている。管理を強化するのではなく、関わり合いの中で創造・創発を促すのが、本来のマネジメントの重要な仕事です。

マネジャー:私が先ほどお話ししたような管理システムやツールを導入する形では、むしろ型の中に人を押し込めてしまうようなもので、創造性・創発性を引き出す事ができないと?