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※この記事は日経ビジネスオンラインに、2013年3月26日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

今日の診察:顎関節症と骨盤の歪み
 顎の関節及びその周辺のこめかみや顎が痛んだり、 顎を動かした時に関節が音を立てたり、口が大きく開けられないなどの症状が表れるのが顎関節症だ。頭痛や顔面痛、首・肩・背中の痛み、腰痛、めまいや耳鳴りなど全身に及ぶ症状を伴うことが多い。また、顎関節症患者には共通して骨盤の歪みが見られ、顎関節症がそこに起因していることも考えられる。
イラスト:市原すぐる

 顎の関節及びその周辺のこめかみや顎が痛んだり、顎を動かした時に関節が「カクカク」「ボキッ」と音を立てたり、口が大きく開けられないなどの症状が表れるのが顎関節症だ。さらに、これら口回りの症状以外に、頭痛や顔面痛、首・肩・背中の痛み、腰痛、めまいや耳鳴りなど全身に及ぶ症状を伴うことが多いのも、この病気の大きな特徴である。

 発症の原因は様々考えられるが、噛み合わせの異常やストレス、打撲や外傷、無理な運動、不自然な姿勢による作業、歯ぎしりや噛み癖によるものが多い。これらによって、顎関節を取り巻く筋肉に異常な緊張が起こり、前述のような諸症状が表れてくる。

 噛み合わせの異常については、歯科治療を施す以外に方法はない。また、顎関節症そのものの治療は歯科医や口腔外科で受けるのが主流だ。だが、顎関節周辺の筋肉や首の筋肉を鍛えることでも、その痛みを軽減できると私は考えている。

 その1つが、首の下にある左右の筋肉(胸鎖乳突筋)のバランスを整える方法だ。鏡を見ながら口を開き、顎を軽く上げ、さらに口を左右に思い切り強く開く。この時に浮かび上がる胸鎖乳突筋が、左右同じバランスで引きつられるように口を開いてみる。3秒数えて力を抜き、また開く。

 これを数回、朝晩繰り返し行うと、早い人で1カ月~1カ月半ほどで顎関節の痛みの軽減に効果が表れてくる。もともと女性よりも筋肉がつきやすい男性の方が、効果を実感できる人も多いようだ。

男性にも見られる骨盤の歪み

 もう1つ、顎関節症患者に共通して見られるのが、骨盤の歪みだ。私が診察した顎関節症患者では、ほぼ100%骨盤に歪みがあると言っても過言ではない。骨盤の歪みは女性だけに起こるものではない。女性も男性も、生きている限りは間違いなく骨盤が歪む。

 骨格の土台となる骨盤の歪みは、脊椎と頭蓋の軸を狂わせ、結果として上顎と下顎とで構築される噛み合わせにも大きな影響を及ぼす。噛み合わせがアンバランスであれば、顎関節や頭部の筋肉、首回りの筋肉にも大きな負担がかかるため、顎関節症の症状をはじめ、最初に述べたような全身の不調にもつながってくる。

 よって、顎の痛みだけでなく、腰痛もあるという人は、ほぼ間違いなく骨盤に歪みがあると考えていい。顎関節症が、そこに起因していることも十分に考えられる。一度専門医を訪ねて、骨盤の歪みをチェックし、正しく整えることも、顎関節症治療の選択肢の1つであることを知っておくとよいだろう。(談話まとめ:新家 美佐子=医療ジャーナリスト)

心と体(日経ビジネス2009年8月24日号より)