先の話題の運動選手の「女々しさ」でいうと(「女々しきぼくらの餅つき合戦」参照)、Tさんはあんまり女々しさを感じないタイプ?
岡:いや、女々しいですよ。何で監督が俺じゃないんだろう、といつも言っているよ。あればかりは、どんなに名選手だったとしても、声が掛かるのを待っているだけじゃないですか。
小田嶋:そうだよね。
岡:どこからも声が掛からないと、また1年解説をやらなきゃいけない。
小田嶋:Tっていい人材だと思うけどね、監督をやるには。
監督になりたい人に、いい解説ができない理由
岡:いや、いいと思うよ。それで、監督になりたいと思っている間は解説も面白くならない、というのがTの持論なんだよ。
だって、監督をやりたかったら、球団批判はできないでしょう。もう俺、監督なんかいいよ、と江本(孟紀)みたいに思っちゃったら、何でも言えるけれど。だから、彼は自分の運命を知りたがっているよね。監督をやらない、という運命だったら、もっと面白い解説ができるし、やる運命だったら、あからさまな批判はここで抑えておかないと、って。
小田嶋:そういう葛藤って、こっちから見ていると分かるものだよ。
岡:野球解説者の話を聞いていると、監督を狙っているのかどうか、はっきりと分かるね。
小田嶋:だって吹っ切れてる人は、全然違うもんね、言うことがね。
岡:吹っ切れ過ぎた豊田(泰光)さんなんて、干されちゃったもんね、あまりにも面白いから。
小田嶋:豊田さんとか江本とか板東(英二)とか、あの辺のやつは好きなことを言ってるけど。
岡:面白いもんね、やっぱり。
小田嶋:あと、面白いのは福本(豊)ね。
岡:ああ、福本ね。そうでない解説者の場合、試合での明らかなミスをミスと言わないもんね、ベンチのミスにしても、選手のミスにしても。
小田嶋:いろいろ議論の分かれるところですけどね、とか言ってお茶を濁して。
岡:本当は、そんなのじゃだめなんだよね。
小田嶋:それは自分にも翻って、書評とかレコード評とかにも通じるんだけど。
岡:そうなんだ。
オダジマの書評が手ぬるい(そうか?)理由
小田嶋:実は俺自身も手ぬるい書評をやっているので、そこのところはね、と思うよ。
岡:本当のことは書けないの?
小田嶋:本当の本当のことを書くとね。出版界は狭いから。だから初めに、これ、だめな本だな、と思ったときには、この本は勘弁してください、と言って載せないという消極的なスタンスになる。

岡:なるほど。
小田嶋:レコード評も、またすごくだめ出しの多い世界で、レコード評をやってる人たちはいつも最大限に褒めちぎって書くのが相場。だから8割しか褒めてないな、ぐらいなところでこちらは判断しているよね。あんなにいつも褒めちぎる人が、これしか褒めてないというのは、ああ、これは結構ダメダメだな、という、そのヘンの感覚が鋭敏になってくる。
岡:鋭敏になっても、うれしくない感覚だけどね、それは。面白いものは面白い、と言い続けたいし、伝え続けたいよ。

「オカ、大丈夫か……!?」
「オダジマ、終わったな……。」
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