:イタリア映画だけじゃないんだ、あるんだ。

小田嶋:いや、いや、人生、いたる所にイタリアありですよ。

お2人のアルバイト体験から、今現在の、仕事に困っている若者へのアドバイスってありますか。

:まあ、僕らは一生やろうと思ってなかったから。

小田嶋:だいぶ違うよね。バイトでずっとやっていくってのは、きついですよ。でもワーキングプアというような言葉って、我々の時代にはあまりなかった言い方でしょう。

:そんな言葉はなかった。

小田嶋:実際にはあったのかもしれないけれど、我々は無邪気にも、大学を出ればいい就職ができるんだ、と思い込んでいたから、どんなに安いバイトをやっていても、別に何とも思わなかった。ただ、これを一生やろうと思えたか、というとそのへんは覚束ない。

:小田嶋の場合は、そうでなくてさえ逃げていたんだから。

小田嶋:本当だよね。バイトですらできてなかったわけだから、とてもじゃないけど、若い人に頑張れ、なんて言えない。

:でも、根拠のない自信みたいなものって、なかった? いろいろあっても、まあ、そんなに困ったことにはならないだろう、みたいな。

小田嶋:俺は大丈夫でしょう、みたいなね。

:小田嶋はともかく、俺はね、みたいなものはあったよ(笑)。

小田嶋:27~28歳のころかな、一緒にバンドをやっていた連中が早稲田の5年生とか6年生とかだったの。俺は大学を出て就職して、そこを8カ月で辞めて、ぶらぶらしてる人間で、今でいえばニートだったわけだ。

「俺は大丈夫」という根拠なき自信

:立派なニートだ。

小田嶋:それでニートの分際で、その5年生だったり6年生だったりする文学部のやつらに、「お前ら就職はいいのか」と説教していた。

先輩に言われたくないっすよ、って。

小田嶋:まさに、そうなんだけど、「お前ら、新卒なんて肩書きは一生に1度しかないんだから、ちゃんと就職した方がいいぞ。留年はしてるかもしれないけど、ちゃんと会社を回って、あれこれした方がいいぞ」と、しきりに言っていたんです。で、「そう言う先輩はどうなの?」と言われたら、「俺は大丈夫っ」と、はっきり答えていた。あれは何だったんだろう?

自分でも分からない根拠のない自信。

:その5年とか6年とかは、どうなったの?

小田嶋:その時代その時代で吸収力を持った業界というのがあって、当時のそれはコンピューター業界か教育業界。彼らは予備校の講師になったけどね。

岡さん、小田嶋さんが持っていた、若者の無根拠な自信みたいなものが、今はなくなっているのでしょうか。

:そうかもしれないね。

小田嶋:当時は、俺はいいんだ、特別だから、と、とにかく思っていた。

それは右肩上がりの時代だったからですか。

小田嶋:じゃなくて、自分は特別な人間だ、と普通に感じていて。

:時代うんぬんというよりも、何かこう、あくまでも自分の中でのことですよ。オレは大丈夫でしょう、周りは大変かもしれないけど、と(笑)。

それは今に至るまで。

:わりとそうですね。

小田嶋:岡の場合は、父親が破産していて、それをやってたから、偉いと思う。俺は35歳ぐらいまでは親が食わしてくれるんだろうと、そういうのはちょっとあった。

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