小田嶋:ああ。海の家のお兄さんが唯一、2週間続いたバイトだね。

モチベーションはどこにあったんですか。

小田嶋:ナンパです。(いつになくきっぱりと)

:どこの海だったかな。

小田嶋:千葉の大網白里という海岸で。でも、ナンパといっても半分業務なのよ。

一同 (鼻白む)

小田嶋:あれ、客寄せだったの。

:そんな業務はないだろう。

小田嶋:ないんだけど、海の家のお兄さんたちというのは、いわゆる1つのチームになっているわけよ。声を掛ける役、それを引っ張る役、さらに上の役と、リードブロッカーから何から分かれていて、俺はトウモロコシと氷担当だったから、一番フロントだった。

:前衛か(苦笑)。

小田嶋:フロントラインは女の子に声を掛けなきゃいけないの。声を掛けるといっても、海のお兄さんのナンパというのは、実はすごくテクニカルなナンパなんだよ。まず、全員平等に声を掛けなきゃいけない。選んでいちゃいけないんだよ、とにかく。

:あからさまに選んじゃいけないよな、たぶん。

小田嶋:それで、最初のひと声が「どこから来たの?」で、地元の子だったら、あっ、そう、と言ってすぐ流す。

:地元はまずいだろう。

スーパーで若妻をナンパするテクニック

小田嶋:地元の暴走族にフクロにされちゃうからね。そこで「東京から来た」と言う子は通るんだけど、人数が合わない場合は、どんなに後ろ髪を引かれても、捨てなきゃいけない。人数がちゃんと合うのを確認したら、後は「夜、ヒマだったら、花火を売ってるから遊びにおいでよ」と言うだけなんだけど、実は。

:だったらナンパじゃなくて、営業活動じゃないか。花火を買ってほしいんだろう?

小田嶋:うん。花火は一応売っている。でも、女の子が遊びに来たら、店を畳んで遊びに行く。

:うーん。

小田嶋:花火は全然売らない。

うーん。

小田嶋:当時のあの辺にある宿って、5時に飯を食わしちゃって、あとはもう寝ろ、という話になっていた。そうすると、「8時だョ!全員集合」を見た後には、やることがもう何もなくなる。そんなときに、「そういえば海の家のお兄さんが言っていたわね」と、思い出すわけです。

やみくもなナンパではなく、一応ニーズは読んでいるんですね。

小田嶋:それはそうですよ。ナンパのテクニックで思い出したけど、学生時代に俺の友達が見事なパターンを持っていて。若い奥さんをナンパするときは、スーパーで「安くて栄養のある野菜って何でしょうか?」と、声をかけるんだって。

:それがきっかけづくりなわけ?

小田嶋:うん。「怪しまれないのか?」と俺が聞いたら、そいつが言うには「全然怪しまれないよ」って。いきなりとはいえ、そういうことを学生に聞かれると、若奥さんは親切に、それだったら、なんて張り切ってしまうんだよ、と。

:そうなのか。

小田嶋:何だったらうちに来て鍋、食べない? ――とまでは、なかなか行かないだろうけど、そういう人もいるんだよ、と。

次ページ 「俺は大丈夫」という根拠なき自信