:でも、そこに着いたら小田嶋はもう帰っちゃうからね。俺はそこから1週間とか10日間とかの、ものすごいハードな生活が待っている。

小田嶋:あのときは何をつくっていたの?

:毎日、中野まで出動して、黒いビルを作っていましたね。今もサンプラザの向こう側にあるでしょう。あそこを通るたびにこみ上げてくるものがあるよね(笑)。

小田嶋:ただの運転手じゃなくて、現場で作業もちゃんとしていたんだよね。

:毎日、宿泊所で寝泊りしているうちに、親方の目にも留まるようになって。

小田嶋:エリートだね。

:エリート、エリート。だって大型の免許があるんだもん。ないけど。まあ、エア免許ということで(笑)。

小田嶋:ガタイもいいしな。

:親方ってさ、免許なんか、いちいちチェックしないんだよ。だから、免許あります、と言ったら、そのまま“あります”で通っちゃったんだよね。

小田嶋:おお、そうか、と。

:宿泊所には風呂があるんだけど、親方は銭湯に行くんだよ。俺はそれにも付き合うようになって。

小田嶋:成り上がりじゃないか。

:成り上がり、成り上がり。風呂だけじゃなくて、一緒に焼肉食ったりしてね。

小田嶋:差しで。

:差しというか、あと2人ぐらい子分がいたんだけど。銭湯では親方の背中を洗わなきゃいけない。そこにはきれいな竜が踊っていて、オレ、どうなっちゃうの、と思ったね(笑)。 まあ、それが、学生時代の思い出深い2つのバイトですね。

小田嶋:いや、思い出した。お前はモデルもやってた。

:やってたけどね。それは言いたくない。

そのチラシ、いくら払っても見てみたい

モデル? ファッション??

:デパートだよ、デパート。デパートのチラシみたいなの。

小田嶋:確かズボン下じゃなかったかな。

:だから脱いではいないからね。ちゃんと着るものは着ていたからね。

小田嶋:こう、ちゃんと、ポーズをつけていた。面白いんで大笑いしたんだよ。

:確かに笑えるようなものだよ。そうであったことは間違いない。

小田嶋:すごい格好つけて立っていたから。

:だから、食うためですよ。とにかく、そういうのは時給がいいわけです。建設作業員だって時給がいい。いや、あれは時給ではなくて、1週間でいくらとか、10日でいくらとかの単位で、途中で逃げたらもう、貰えないんだけどね。

小田嶋:逃げるやつもいたか。

:いや、小田嶋のようなやつは基本的にいない。ただ、ほとんどの人たちは、ひと月分を貰うと、次の休みの2日ぐらいの間に、競輪だ、競艇だ、競馬だ、と全部使っちゃうんです。

小田嶋:時代劇みたいだな。

:お金を貯めている、なんていう人はいない。でも僕は10日でまた学生に戻って、アメリカンフットボールにいそしむ。いわばシーズンオフのときのバイトですよね。しかも僕の場合は、貯めなきゃいけないという事情もあった。僕はやっぱり異質な存在ではあった。

小田嶋:だからオヤジさんが破産した時代の岡は、なかなかあれだよ、取っていたんだよ。

:小田嶋は情けなかった。お前に「あのバイト、どうなった?」と聞くと「いや、2日で辞めた」とか、とにかくいつも辞めちゃっていたから。

いまどきの若い者は本当にもう、という感じですね。

:小田嶋の場合は、海の家のお兄さんが一番長かったんじゃないか。

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