本記事は2009年4月17日に「日経ビジネスオンライン」の「人生の諸問題」に掲載されたものです。語り手の岡 康道さんが2020年7月31日にお亡くなりになり、追悼の意を込めて、再掲載させていただきました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(日経ビジネス電子版編集部)
小田嶋:今、『蟹工船』とか何とかがヘンなブームになっているけど、岡も俺も学生時代は、そこそこ労働はやっていたよね。
岡:やってたよ、もちろん。でも小田嶋は、いつだって、すぐ辞めてなかった?
小田嶋:そう、すぐ辞めてたよ。
クリエイティブディレクター 岡 康道氏 (写真:大槻 純一、以下同)
岡:「何々のバイトしてるんだよ、俺」って言っていて、次に会うともう辞めていた。
小田嶋:2時間でやめた、っていうのもあった。
岡:そう、すごい早さで辞めているんだよね、いつも。というか、その2時間っていうのは、いったい何なんだ。
小田嶋:電車を清掃する仕事があったの。駅に着いている間に車両の中を掃除するんだけど。
岡:それはつらそうじゃないけど。
小田嶋:大したことはないんだけど、でも仮眠所があってさ、何かそれこそ『蟹工船』みたいな味がしたのよ。
岡:二十何年か前だろう?
小田嶋:そう、大学に入ったばかりのときかな。最初につなぎの制服を支給されたのね。そのときに「えっ、このつなぎ着るの? オレ」って、まずちょっとひるんで。それで仮眠所に案内されて、決め手になったのは、ごみ箱に「私は足がありません」と貼ってあったことだった。
岡:どういうこと?
「ああ、こんなところでは働けないなあ」
小田嶋:どういうことかというと、ごみを投げる人がいるからなんだよ。で、ごみ箱にそのごみがちゃんとおさまらない。だから、ちゃんとごみ箱まで捨てに来い、という趣旨が、「私には足がありません」という張り紙になるというわけで。それを見て、これ、イヤだな、オレ、こんなところで働いたらだめになっちゃうなって。
小田嶋隆の修辞の美学には合わなかった、とおっしゃるんですね。
小田嶋:だから、説明役のおじさんから制服を渡されて、ちょっとここで待って、と言われた隙に逃げちゃったの。
岡:じゃあ、清掃のせの字もしてないわけだ。
小田嶋:していない。だからバイト代も何も、もらっていないけど。
当たり前ですね。
岡:バイト未遂ということか。そういうことって許されるの?
小田嶋:分からない。
岡:電話は、かかってこなかったの?
小田嶋:まだ説明の途中で、住所とか教えていなかったから。でも友達の紹介だったから、その友達がひどい目に遭ったようだけど。
岡:それはそうでしょう。
小田嶋:すごい顔をつぶしたかな。
岡:つぶしたかな、って。普通は許されないことだよ。
小田嶋:別のバイトでいうと、俺はシャンデリアの清掃でスカウトされたんだよね。それは、4階ぐらいの吹き抜けにぶらさがっているシャンデリアの部品を、足場を組んで外して、バケツの中に張った水で洗う、という仕事なんだけど。外す係と、下でごしゃごしゃ洗う係とがあって、圧倒的に楽なのは上で作業する方なんだけど、何しろ高いじゃない?
岡:怖いね。
小田嶋:普通は怖いわけよ。でも俺は高いところは怖くないから、足場をすいすいすいすい上っていって、はい、こっちをやりますよ、と言っていたら、すごく将来を嘱望されて、「君、うちに来ないか」と、結構、真剣にスカウトされました。
すごいじゃないですか。
小田嶋:それが就職活動をしている一時期、俺の心の支えになっていて、いざとなったら俺は高いところで仕事をすればいいんだ、というふうに思って精神を安定させていました。
岡:とび職みたいな運動神経が要求されるだろうな。
小田嶋:そう。それで結構、条件がいいのよ。
岡:基本的に危険を冒しているものな。
小田嶋:俺にとっては、そんなにきつくないんだけど、怖いということさえ除けば、いいお金がもらえるわけ、短時間で。
岡さんが面白かったバイトは何ですか。
岡:面白かったというか、今、話せばたぶんこの辺は面白いというのが、郵便局のバイトなんだけど。昔は電話が共同だったこともあって、電報の需要が多かったんですよ。それで、成人式の日というのは「成人の日おめでとう」って、田舎の親とか親戚のおじさんとかから、その二十歳になる人たちに対して電報がたくさん届くわけです。
そこでアルバイトの需要も発生するんですね。
岡:そう。僕がやったのは成人の日の電報配達で、池袋を自転車で回るんだけど、途中から雪が降ってきちゃったの。それで雪と自転車って、すごく苦しい組み合わせなんです。もう寒いし、大変だし、でも、早く届けなくちゃ電報の意味がないから、なるべく急がなくちゃいけないし。雪が降る中、僕のそばには、すごい数の電報がある。しかもその日は僕の成人式でもあったという。
小田嶋:中国の映画みたいだな。
バイトに行く君を車で送った僕
岡:そうでしょう。そのくらい当時の僕は追い詰められていた、ということなんですけどね。
何か、ほろっとくるような。笑うところじゃないですよね、念のため。
岡:ははは。でも、あまり悲しくもなかったのよ。ただ、これまで人にも言わなかったし、小田嶋にも言ってないけど。だからちょっと抑圧していたね、記憶を。今、話していて何か思い出してみようかな、と思っていたら、そうだ、そんなことがあったな、って思い出した。
小田嶋:岡は何か、建設関係もやっていたよね。
岡:やってた、やってた。報酬が高いのは、1週間とかまとまった期間、宿泊所に入って、寝泊りしながら作業する、というパターンなんですよ。中でも、もっとも高いのは、大型免許を持っていて作業員を運ぶ役目なんです。
運転手ということですか。
岡:いや、運んで、しかも建設作業もするんだよ。それでまた運転して、宿泊所に帰る。ただそれは、本当は大型免許がないとだめなんです。でも事故さえ起こさなければいいやって、俺、免許があるってウソをついて。
・・・・・・時効かな。
岡:大型の免許がないのに、マイクロバスに乗り、運転し。それで当然、内輪差とか分からないから、ガガガッと電柱にぶつけちゃう。でも、どんなにぶつけても、乗っている人たちはみんな寝ているから、分からない。
小田嶋:岡が作業員のバイトをやっていたことを、俺がなぜ知っているかというと、バイトに行くお前を、俺が自分の車で送ったことがあるからだよ。
運転手付きで出勤していた運転手だったんですね。
小田嶋:こいつのバイト先というのが、板橋区のはずれで、そこまで行く足がないんですよ。下赤塚の先の、何か変な山を登っていかされたよ、俺。
岡:でも、そこに着いたら小田嶋はもう帰っちゃうからね。俺はそこから1週間とか10日間とかの、ものすごいハードな生活が待っている。
小田嶋:あのときは何をつくっていたの?
岡:毎日、中野まで出動して、黒いビルを作っていましたね。今もサンプラザの向こう側にあるでしょう。あそこを通るたびにこみ上げてくるものがあるよね(笑)。
小田嶋:ただの運転手じゃなくて、現場で作業もちゃんとしていたんだよね。
岡:毎日、宿泊所で寝泊りしているうちに、親方の目にも留まるようになって。
小田嶋:エリートだね。
岡:エリート、エリート。だって大型の免許があるんだもん。ないけど。まあ、エア免許ということで(笑)。
小田嶋:ガタイもいいしな。
岡:親方ってさ、免許なんか、いちいちチェックしないんだよ。だから、免許あります、と言ったら、そのまま“あります”で通っちゃったんだよね。
小田嶋:おお、そうか、と。
岡:宿泊所には風呂があるんだけど、親方は銭湯に行くんだよ。俺はそれにも付き合うようになって。
小田嶋:成り上がりじゃないか。
岡:成り上がり、成り上がり。風呂だけじゃなくて、一緒に焼肉食ったりしてね。
小田嶋:差しで。
岡:差しというか、あと2人ぐらい子分がいたんだけど。銭湯では親方の背中を洗わなきゃいけない。そこにはきれいな竜が踊っていて、オレ、どうなっちゃうの、と思ったね(笑)。 まあ、それが、学生時代の思い出深い2つのバイトですね。
小田嶋:いや、思い出した。お前はモデルもやってた。
岡:やってたけどね。それは言いたくない。
そのチラシ、いくら払っても見てみたい
モデル? ファッション??
岡:デパートだよ、デパート。デパートのチラシみたいなの。
小田嶋:確かズボン下じゃなかったかな。
岡:だから脱いではいないからね。ちゃんと着るものは着ていたからね。
小田嶋:こう、ちゃんと、ポーズをつけていた。面白いんで大笑いしたんだよ。
岡:確かに笑えるようなものだよ。そうであったことは間違いない。
小田嶋:すごい格好つけて立っていたから。
岡:だから、食うためですよ。とにかく、そういうのは時給がいいわけです。建設作業員だって時給がいい。いや、あれは時給ではなくて、1週間でいくらとか、10日でいくらとかの単位で、途中で逃げたらもう、貰えないんだけどね。
小田嶋:逃げるやつもいたか。
岡:いや、小田嶋のようなやつは基本的にいない。ただ、ほとんどの人たちは、ひと月分を貰うと、次の休みの2日ぐらいの間に、競輪だ、競艇だ、競馬だ、と全部使っちゃうんです。
小田嶋:時代劇みたいだな。
岡:お金を貯めている、なんていう人はいない。でも僕は10日でまた学生に戻って、アメリカンフットボールにいそしむ。いわばシーズンオフのときのバイトですよね。しかも僕の場合は、貯めなきゃいけないという事情もあった。僕はやっぱり異質な存在ではあった。
小田嶋:だからオヤジさんが破産した時代の岡は、なかなかあれだよ、取っていたんだよ。
岡:小田嶋は情けなかった。お前に「あのバイト、どうなった?」と聞くと「いや、2日で辞めた」とか、とにかくいつも辞めちゃっていたから。
いまどきの若い者は本当にもう、という感じですね。
岡:小田嶋の場合は、海の家のお兄さんが一番長かったんじゃないか。
小田嶋:ああ。海の家のお兄さんが唯一、2週間続いたバイトだね。
モチベーションはどこにあったんですか。
小田嶋:ナンパです。(いつになくきっぱりと)
岡:どこの海だったかな。
小田嶋:千葉の大網白里という海岸で。でも、ナンパといっても半分業務なのよ。
一同 (鼻白む)
小田嶋:あれ、客寄せだったの。
岡:そんな業務はないだろう。
小田嶋:ないんだけど、海の家のお兄さんたちというのは、いわゆる1つのチームになっているわけよ。声を掛ける役、それを引っ張る役、さらに上の役と、リードブロッカーから何から分かれていて、俺はトウモロコシと氷担当だったから、一番フロントだった。
岡:前衛か(苦笑)。
小田嶋:フロントラインは女の子に声を掛けなきゃいけないの。声を掛けるといっても、海のお兄さんのナンパというのは、実はすごくテクニカルなナンパなんだよ。まず、全員平等に声を掛けなきゃいけない。選んでいちゃいけないんだよ、とにかく。
岡:あからさまに選んじゃいけないよな、たぶん。
小田嶋:それで、最初のひと声が「どこから来たの?」で、地元の子だったら、あっ、そう、と言ってすぐ流す。
岡:地元はまずいだろう。
スーパーで若妻をナンパするテクニック
小田嶋:地元の暴走族にフクロにされちゃうからね。そこで「東京から来た」と言う子は通るんだけど、人数が合わない場合は、どんなに後ろ髪を引かれても、捨てなきゃいけない。人数がちゃんと合うのを確認したら、後は「夜、ヒマだったら、花火を売ってるから遊びにおいでよ」と言うだけなんだけど、実は。
岡:だったらナンパじゃなくて、営業活動じゃないか。花火を買ってほしいんだろう?
小田嶋:うん。花火は一応売っている。でも、女の子が遊びに来たら、店を畳んで遊びに行く。
岡:うーん。
小田嶋:花火は全然売らない。
うーん。
小田嶋:当時のあの辺にある宿って、5時に飯を食わしちゃって、あとはもう寝ろ、という話になっていた。そうすると、「8時だョ!全員集合」を見た後には、やることがもう何もなくなる。そんなときに、「そういえば海の家のお兄さんが言っていたわね」と、思い出すわけです。
やみくもなナンパではなく、一応ニーズは読んでいるんですね。
小田嶋:それはそうですよ。ナンパのテクニックで思い出したけど、学生時代に俺の友達が見事なパターンを持っていて。若い奥さんをナンパするときは、スーパーで「安くて栄養のある野菜って何でしょうか?」と、声をかけるんだって。
岡:それがきっかけづくりなわけ?
小田嶋:うん。「怪しまれないのか?」と俺が聞いたら、そいつが言うには「全然怪しまれないよ」って。いきなりとはいえ、そういうことを学生に聞かれると、若奥さんは親切に、それだったら、なんて張り切ってしまうんだよ、と。
岡:そうなのか。
小田嶋:何だったらうちに来て鍋、食べない? ――とまでは、なかなか行かないだろうけど、そういう人もいるんだよ、と。
岡:イタリア映画だけじゃないんだ、あるんだ。
小田嶋:いや、いや、人生、いたる所にイタリアありですよ。
お2人のアルバイト体験から、今現在の、仕事に困っている若者へのアドバイスってありますか。
岡:まあ、僕らは一生やろうと思ってなかったから。
小田嶋:だいぶ違うよね。バイトでずっとやっていくってのは、きついですよ。でもワーキングプアというような言葉って、我々の時代にはあまりなかった言い方でしょう。
岡:そんな言葉はなかった。
小田嶋:実際にはあったのかもしれないけれど、我々は無邪気にも、大学を出ればいい就職ができるんだ、と思い込んでいたから、どんなに安いバイトをやっていても、別に何とも思わなかった。ただ、これを一生やろうと思えたか、というとそのへんは覚束ない。
岡:小田嶋の場合は、そうでなくてさえ逃げていたんだから。
小田嶋:本当だよね。バイトですらできてなかったわけだから、とてもじゃないけど、若い人に頑張れ、なんて言えない。
岡:でも、根拠のない自信みたいなものって、なかった? いろいろあっても、まあ、そんなに困ったことにはならないだろう、みたいな。
小田嶋:俺は大丈夫でしょう、みたいなね。
岡:小田嶋はともかく、俺はね、みたいなものはあったよ(笑)。
小田嶋:27~28歳のころかな、一緒にバンドをやっていた連中が早稲田の5年生とか6年生とかだったの。俺は大学を出て就職して、そこを8カ月で辞めて、ぶらぶらしてる人間で、今でいえばニートだったわけだ。
「俺は大丈夫」という根拠なき自信
岡:立派なニートだ。
小田嶋:それでニートの分際で、その5年生だったり6年生だったりする文学部のやつらに、「お前ら就職はいいのか」と説教していた。
先輩に言われたくないっすよ、って。
小田嶋:まさに、そうなんだけど、「お前ら、新卒なんて肩書きは一生に1度しかないんだから、ちゃんと就職した方がいいぞ。留年はしてるかもしれないけど、ちゃんと会社を回って、あれこれした方がいいぞ」と、しきりに言っていたんです。で、「そう言う先輩はどうなの?」と言われたら、「俺は大丈夫っ」と、はっきり答えていた。あれは何だったんだろう?
自分でも分からない根拠のない自信。
岡:その5年とか6年とかは、どうなったの?
小田嶋:その時代その時代で吸収力を持った業界というのがあって、当時のそれはコンピューター業界か教育業界。彼らは予備校の講師になったけどね。
岡さん、小田嶋さんが持っていた、若者の無根拠な自信みたいなものが、今はなくなっているのでしょうか。
岡:そうかもしれないね。
小田嶋:当時は、俺はいいんだ、特別だから、と、とにかく思っていた。
それは右肩上がりの時代だったからですか。
小田嶋:じゃなくて、自分は特別な人間だ、と普通に感じていて。
岡:時代うんぬんというよりも、何かこう、あくまでも自分の中でのことですよ。オレは大丈夫でしょう、周りは大変かもしれないけど、と(笑)。
それは今に至るまで。
岡:わりとそうですね。
小田嶋:岡の場合は、父親が破産していて、それをやってたから、偉いと思う。俺は35歳ぐらいまでは親が食わしてくれるんだろうと、そういうのはちょっとあった。
嫌な息子ですね。
岡:でも親が破産したというのもさ、それだけで自分の人生がドラマチックになっているわけだから、うまくいくに決まってるっていうか。だって、他人が聞いても面白い話だろう? だから、絶対大丈夫だと思っていた。うまく言えないけど、それほどの不運があった以上、後はもう絶対にいいに決まっているって。そう思わない?
小田嶋:いや、それは思わなかったけど。
岡:だって、お芝居みたいで面白いんですよ、とんでもない目に遭うことが。例えば夜中に窓ガラスがバーンって割られるって、映画みたいじゃない? もう、自分がアンディ・ガルシアみたくなっているわけよ。それはそれで面白いんだよね。
小田嶋:そこは不思議な当事者感があるだろうね。
岡:あるんだよ。あまりの不幸というかアンラッキーって。体のことじゃなければね。
岡さんはそこで悲劇の主人公方向には行かなかったんですね。
岡:いや、悲劇じゃないですよね。
今の若い子たちは、自らを悲劇のスパイラルに向かわせたがるというか。
小田嶋:だから『蟹工船』なんかが売れるんでしょうね。ただ、その人たちの問題点というのは、自分が勝てないと思い込んでいる、というよりも、そもそも闘志がないというところじゃないかと思うんだけど。
岡:勝とう、という発想がないんだ。
小田嶋:そう。勝とうとも思っていないことを、自分でも自覚していると思うんだよ。確かに彼らは、勝とうと思うような育ち方もしていないだろうし、そうすると、今さら、どこで、何を、俺が戦うわけ? という感覚になるんだろう。それは分からないでもない。
建築現場も広告業界も、ゲームとしては大差ない
岡:大学を卒業するとか、会社で仕事をするとか、何か決められたことをやるというのはゲームのようなものだから、そのゲームはもちろん勝った方が楽しいわけです。でも、勝っても負けても、ゲームをやってることは同じだからさ。僕にしたって結局、そのぐらいの感じですよ。
岡さんにしても勝ちにこだわっているわけではないんですね。
岡:違います。常に勝とうなんて思っていないですよ。でも、ルールを熟知したり、相手の出方を知っていたりすれば、勝つチャンスは多くなってくる。そういうふうに考えれば、仕事だって、何だって同じですよ。結局はゲームなんだから、というふうに自然と思える。というか、そうとしか思えなくなる。
小田嶋:岡は、建設作業員をしていたって、親方の背中を流す地位にまで成り上がろうとするやつだから。
岡:そのときは建設作業員の役割を演じている自分がいるわけだよ。で、今は広告を作る役割をやっている。役を演じるという意味においては、どちらも大して変わらない。
小田嶋:岡はそのへんは昔から分かりやすいよね。今やってるのはバックギャモンだとか、今やってるのはマージャンだとか。
岡:マージャンをやるときもあるし、対談をやるときもある。それは全部、等価なんだよね。
小田嶋:今、自分はどういうテーブルでどういうルールのゲームやっているのか、という話だからね。
岡:そうそう、そうだよ。逆に言えば、仕事は何でもいいわけですよね、高く賃金を払ってくれれば。
小田嶋:そこで条件が入るところが、ちょっとまた、岡でね。
岡:安くてもいい、ということはないと思うんですよ。
小田嶋:あと、さらにルールを自分で作っていったりするからね、お前は。
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