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小田嶋:オーソライズされているかは定かではないけど、もちをついたような性格、という。

:だったら僕は明らかに、もちをついた方だね。

小田嶋:分野的には竹を割っていけるところもあるんだろうけど。

:そう、あるんだけどね。人にはそういう印象を与えるように努力もしているから。でも、内心は、かなりのもちなんだよ(笑)。

岡さんは運動選手もかなり女々しい、とエッセイに書いておられましたね。

:すごい女々しいですよ、彼らは。だいたい試合に出られるやつというは限られているわけじゃないですか。で、チーム一丸だ、なんて言うけど、そんなことは絶対にないんですよ。試合に出てないやつは、木っ端みじんに負けることだけを望んでいる。

小田嶋:なるほど。

:エラーしろ、エラーしろ、エラーしろ、と。

小田嶋:うーん。

:内実はとっても汚い。だけど、俺を試合に出さないからこんな目に遭うんだ、というふうになることで、ぎりぎり保てるわけだから。それはもうスポーツの種類を問わず、全員そうだと思うんですよね。また、そう思っていないと、次のチャンスでレギュラーにもなれないわけです。

小田嶋:本当に一丸になって応援していたらね。

:それだと、ただのスタンドの人だからね。

小田嶋:そりゃそうだよね。

控えの選手は、敗退でなぜ泣くか

:一番望んでいるのは、レギュラーのけがなわけですよね。

小田嶋:はあ。

:もう折れちゃえ、と。折れちゃえ、切れちゃえ、ですよ。だからすごい女々しいと思いますよ。

小田嶋:そういうことろでチームマネジメントというのが必要になるんじゃないですかね。有能な監督というのは、そういう力学を使いながらチームを運営する。それは決して一丸にすることじゃなくて。

:高校野球でも大学ラグビーでも何でもいいんだけどさ、特定の選手が活躍して優勝した、と。それで、ベンチの控えも泣いてます、と実況なんかでは言うんだけど、同じ気持ちなわけないじゃないか。あれ、半分ぐらいは、出られなかった自分というものに対しての悔し涙だよね。それで泣いているんでしょう。

小田嶋:己のストーリーがあるよね。

:あるよ、絶対それは。

小田嶋:何がワン・フォー・オールだか、だよね。

:そりゃグラウンド上はワン・フォー・オールだけどさ、見ているだけの控え選手は、こっちは関係ないという。しかも大会の格が上がれば上がるほど、女々しさは渦巻く。だって補欠といったって、ついこの前までは県の代表とかそういうのですからね。

小田嶋:自意識はもてあますほど高く設定されるだろう。

:僕はそんな高いレベルの大会でやったことはないけども、どんなレベルであれ、試合に出ていないときは失策を願っていましたよね、仲間の。

しかし、なかなかそれをはっきり言う人はいないですね。

小田嶋:特にスポーツはそうでしょう。

:現役では言えないですよ。

小田嶋:過去の話だから言えるという感じでしょう。

:そうですね。だって、自分の中で抑圧しているわけですよね、その気持ちを。でも、もうひとつ、スポーツには「よき敗者たれ」というものがあって、これだけは確かにすごくいいなと思うんだけど。よき敗者になることは、スポーツ以外ではなかなか学べないことでもあるんですよ。

「よき敗者」を教えるものとは

小田嶋:勝者は当たり前でいいものだけど、敗者になったときに立派でいられるかという。

:そう、どんなやせ我慢でもね。まあ、よき敗者たれ、というのは、みんなやせ我慢の話なんだけどさ。負けて本当にうれしいなんてことは、実際にはないわけ。だけど、やせ我慢ができるかどうか、ということがプライドだったりするでしょう。逆に言えば、敗者になった瞬間に、自分を抑圧するということですよね。そういうことができないとだめだ、という訓練については、スポーツの一番いいことなんじゃないかと思いますけどね。

小田嶋:大統領選で負けた用のスピーチをちゃんと考えてあるというようなことだよね。

:あれ、スポーツっぽいね。

小田嶋:チクショー、とは言わずに相手をたたえる。

:だってアメリカでは大統領選自体がまず、味方なのに敵として始まるもんね。

小田嶋:予備選で散々言い合っていたくせに、終わった後に、さあヒラリー、チームを組もう、なんて。