:小田嶋の場合は、活字になった後に、今度はその活字をいかに広く売るか、というようなハードル設定をしてもよかったはずなんだけど、お前はそういう方向には行かないだろうな。

小田嶋:行かなかった。行かないで、その場所に立ち止まってひがんでいた。どうせ売れないんだしさ、とか言って(笑)。

そこで「よし、今度は売ろう」と考えたら、就職した食品会社を辞めなかったですよね、第一に。

小田嶋:・・・・・その通りですね。しかも物を書く人間って、売れたいという気持ちを持っていても、売れるということをばかにする気持ちもどこかにあったりするから、そこはややこしいところなんですよ。

例えば嫉妬とか、そういうものが逆ベクトル的なモチベーションになることはありますか。

:どうかなあ。あの人のようになりたい、というよりも、むしろ、本来俺がいるべき場所にあいつがいることが許せない、というのが嫉妬だと思うけれども、僕自身はあんまりそういうふうには他人に対して感じないですね。だから嫉妬するやつの気持ちもよく分からないというか、俺が単に鈍いのか、結局、関係ないでしょう、他人は、という感じ。

小田嶋:嫉妬というやつはあっても、創作のエネルギーにはあんまりならないんじゃないですかね。

:創作のエネルギーにはならないと思うね。

小田嶋:嫉妬というやつは、人によってメカニズムが全然違うのかもしれない。俺なんかが嫉妬というか、不快に感じるのは、例えば自分より低いと自分では思っている人間が、自分より高い評価を得ていることに腹が立つ。

:そうだよ。だから自分ができるポジション、自分がいてもいい場所に誰かがいる、ということは不快だよ、はっきり言って。

キムタクなら立たない腹が、あいつがモテるとなぜ立つのか

小田嶋:キムタクがもてても、別に腹が立たない。そうじゃなくて、俺よりかっこ悪かったり、俺よりばかだったりするやつが、俺よりもてているというと、何か違っているんじゃないだろうか、とむかむかする。それは折り合いが付きにくい。

:僕が一番嫉妬したのは、マージャンをやっていて小田嶋だけがツいていて、まったく俺がツいてないという日があったときだよ。

小田嶋:ゴルフをやるとよく分かるんだけど、明らかにうまいやつに負けてもそんなに腹は立たないんだけど、そうじゃなくて、何かこいつはずるいぞ、というやつがいたりすると、むっと来るぞ。

それは義憤というやつですか。

小田嶋:理不尽に対する何か不思議な感情。

:合理的なものではないよね。

小田嶋:嫉妬って、人によって持ち方とか、解釈とかの違いがあるんだろうけど。

:でも、確かにいるね、嫉妬深い人というのは。言われてみれば、いる、いる。

というか、永田町方面なんかを見ていると、何か世の中を動かす原理はそれだ、という感じがしますが。

健康な嫉妬と、なんでもねたむ人

:そうだね。創作のエネルギーにはならないけど、別のいろいろなエネルギーにはなっている。何か策略をめぐらせるときのエネルギーは、確かに嫉妬もありですよね。

小田嶋:でも、政界がどうかは別にして、そういう健康な嫉妬、と言っては何だけれども、自分が本来、彼より高く評価されるべきだと考えるタイプの嫉妬は、まだそんなに問題はないと思うわけだよ。そうじゃなくて、何だか知らないけど嫉妬する人って、いるじゃないか。とにかくキムタクがもてているのが気に食わない、みたいな感情を持つやつ。あれはよく分からない。

:そうだよね。それを考えていてもしょうがないというかさ。そういう嫉妬深い人の気持ちはよく分からないし、嫉妬を受けたら確かに悩ましいと思うけれど、でも、される方がいいんじゃないの、する人生より。

出ました。では、お2人はオバマに嫉妬しますか。

岡・小田嶋:しません。

小田嶋氏(左)、岡氏(右)

撮影協力 : Cafe 杏奴

※当時は東京都豊島区のお店でしたが、現在はリンク先に移転されています

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