まずモチベーションについて書くモチベーションからして。

小田嶋:そこに書くモチベーションを持ってないのに、何でモチベーションの説教を自分ができるのかという、難しい……。

:何でそんなことを宣言するんだよ。

小田嶋:いや、自分的に一番興味があったから。

本当ですか。

小田嶋:いや、俺が講師をしているライター講座の生徒さんたちに言った説教を、俺自身が再録すればいいかな、と思って。だって何だか自分でいいことを言った気がしていたから。

:ちなみにどういうことを言ったのかな。

小田嶋:才能というのは天から授かったものだと思われがちだけれど、才能というのは、自分がどれだけ、ある対象に意欲を持っていけるのか、ということなんだよ、みたいな。もう少し言い方を変えると、唯一有効な才能とはモチベーションのことなんだ、ということ。

誉められたくて、誉められた僕は、途方に暮れた

とてもすてきなお話ですね。

小田嶋:そういう話をして、いい話だな、と自分で思ったのよ。モチベーションを常に高く持っていられる人がいれば、その人はコンスタントにいい仕事ができるはずだと。

で、それはどうやったらいいんですか。

小田嶋:そこなんだけど、それはどうやったらいいの、と言われると、すごく困るの。

・・・・・・。

:難しいよね。

小田嶋隆氏

小田嶋:ライターだって、コラムニストだって、最初に自分が書いたものが活字になったころには、非常に高いモチベーションを持っているわけ。載ったというだけで、すごくうれしいから。一度書いたやつを見直すのでも10回ぐらい見直して、これは「しかし」がいいか、「けれども」がいいかというようなところまでも、猛烈に気を配った原稿を書く。

 で、そういう人がだめになるというのは、もともと上手だった人が下手になるわけがないので、つまりモチベーションがだめになっている、というわけだよ。だから功成り名を遂げたり、2億円とか貯金があったりしたら、文章書きみたいな、ものすごく面倒くさい作業は、たぶんできる仕事じゃないよね。

:不遇感とか、鬱屈感がないと逆に書けない、というのはあるだろうね。

小田嶋:でもあまりにもひがみっぽくなっていたりしていると、もう書く気持ちすら起こらないから、あと、もうちょっとだけ、という、うまいハードル設定が難しい。

 俺が30代のころにアル中になっていたというのも、書いたものが活字になったり、自分の名前の本が出たりとかでは目標を達成したんだけど、かといって、ものすごく売れたわけでもない。そうすると新しいモチベーションってあんまり出てこなかったりして、そこで、やる気がすごくなくて飲んでばっかり、みたいなことになったんだと思うんだよ。

:僕の場合、分かりやすいのは、褒められる、ということですね。他者からの評価。

岡さんは電通時代の90年代後半に、広告界のメジャーな賞の3冠同時受賞を果たしました。で、その後、途方に暮れた、とおっしゃっていましたね。

:いや、あれ、もぬけの殻みたいになっていましたね(笑)。僕が感じているほとんどの理由は、褒められたいから頑張る、というだけであって、一応、一通り褒められちゃったら、その先はもう。

小田嶋:真空だよね。

ならば嫉妬はモチベーションになるか?

:しかも社員だったら、別にそれ以上褒められたって、報酬が上がるわけでもないし。で、アメフトの場合は、当たり前のことながら誰も褒めないし、もちろん所得は関係ないでしょう。そうすると、自分で褒めるしかない。自分で褒めるのも確かにモチベーションにはなるんだけど、でも、それも限界があるという。

小田嶋:繰り返せないよね、そんな自分を褒め続けるなんて。

:繰り返せないのよ。お前はよくやっているって、俺自身が言い続けるなんてさ(笑)。

小田嶋:だからコンスタントにちゃんと仕事をしているやつってさ、その目標設定のうまいやつだよ。

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