小田嶋:というのは、多くの田舎の普通のアメリカ人にとって、好きな人というのは、頭がよかったり、弁が立ったり、抜け目がなかったりする人じゃなくて、ちょっとおっちょこちょいだけど、人のいいおやじのことで、ブッシュはまさにそれだったんだ、と。だからブッシュの支持率はすごく低かったけど、逆に言えば、あれだけクソミソな政治、あれだけめちゃくちゃな経済で、本来だったら支持率なんか5%ぐらいでいいところを、それでも20%あったというのは、人柄としては愛されていた、という。

:ひどい理屈だな、それ。

小田嶋:ひどい理屈だね。でも、そう書いている人がいて、俺、ちょっと、なるほどな、と思って。一方、オバマがそういう意味で愛されているかというと、この先、もし失政があったり、イラク戦争みたいなことが起こったりして、ひどい話が出てきたときに、手加減してもらえるかどうか、それは分からないよ。

:そこが人生10割の人物の弱点だ。最初から自分で設定したレベルが高い人は、みんなが設定するハードルも高いんだ。

小田嶋:だからオバマみたいな人は当然、有能であって初めて評価されて、無能なオバマとなると、これはもう……。

:でも今度の選挙で、アメリカは有能を求めたんだろう。

小田嶋:冗談じゃない、人柄じゃなくて有能さだよ、ということだったんだよね。

ちょっと学習して。

小田嶋:あのおやじも人は悪くないんだけどな、ちょっと無能すぎたよね、ということで。

オバマはかっこいいから大統領になれた

で、前回の疑問なのですが、ヴィダル・サスーンで耳を切られたのがオバマさんだったら訴訟に勝てたか、という。(前回参照)

小田嶋:オバマは岡とは逆の意味で勝てない。つまりオバマのような黒人は、別に社会的マイノリティじゃないから。

:マクドナルドに立ち向かった白人の老女ではない。

小田嶋:そう。岡のケースは、日本人ごときが何を言う、という意味で勝てないわけだけど、オバマの場合はそれとはまた違っている。

:あらかじめ下に見られる存在ではないもんな、オバマは。

小田嶋:だいたい日本の中でも、今の30歳から下って、黒人ワナビーなやつも多いでしょう。彼らってファッションにしても、音楽にしても、黒人文化がナチュラルにかっこいいと思ってるんだと思うよ。これが俺あたりの年代だと、親の世代から何か差別意識みたいなものをうっすらと浴びているんだけど、そういうことにとらわれるのがかっこ悪くて無意味だ、ということも分かっていて、何か葛藤は覚えるんだけど。

:オバマはかっこいいと思うよ。

小田嶋:腹筋が割れていたりして、単純にいい男だよね。あれがデブだったりしたら、ちょっと人々の熱狂も違ってくるという。

:それと、オバマが結婚した相手が黒人だったということですよ。あれがもし、ブロンドの白人のチアリーダーみたいな子だったら、アメリカは許してないと思うな。だって例えば、もし、あの白鵬が、SPEEDの誰かと結婚したら……。

何でSPEEDなんですか。

:いや、例えばだよ。

小田嶋:O.J.シンプソンになるわけだ。

岡 康道氏

:コーヒーのお代わりもらっていいですか。

小田嶋:私もいただきましょう。

:あ、もしもし、岡と申しますが、ノハラさんはいらっしゃいますでしょうか?

一同:は?

59歳(以下)のアメフトチームにモチベーションはあるか?

:(ケイタイを取り出して)あ、ノハラ?明日さ、午前中に○○公園で練習するんだけど、来てみない? (対談中にアメフトのアポ取りをしている)

小田嶋:ノハラって、あのノハラ? まさか。

:そう。あのノハラ。

いったい、だれ?

小田嶋:大学時代の友達です。しかし俺たちの年代のやつって、本当なら仕事が忙しくて、そうそうアメフトなんてやっていられないはずなんだが。

:そうなんだよ。いろいろ誘っているんだけど、U-59(アンダーフィフティーナイナーズ=岡さんが2008年春に立ち上げたアメフトのシニアチーム・「神田川の男、ルージュで伝言する女」参照)の現在の一番の問題は、モラルをどう維持するか、になっていて。

小田嶋:どういうモラル?

:立ち上げから1年が立ち、何のためにやってるの? ということにだんだんなってきた。

小田嶋:士気でいうところの“モラール”ね。モチベーションのことね。

:立ち上げたときはもう、みんな燃えているから、モラールうんぬんは出ないわけです。「僕たち、またできるのか」「それは夢のようだ」と言って集まって。それで道具なんかも金に糸目を付けずに用意したりして、それを家の鏡の前で付けたりしてみて、心が弾んじゃって。 そうやって、確かに始まったんだけど。

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