※この記事は日経ビジネスオンラインに、2012年12月12日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。
今のままでいい、と考える人。
1つは現状に満足している人、もう1つはあきらめている人。
これらの2人は、もともと怒ろうともしないか、怒っても仕方がないと怒らない。
怒る人とは、「こうしたい」「こうありたい」との思いが阻止されていると感じて、腹を立てる人である。ムカついたり、イライラしたりと怒りの感情で心が揺れ動いても、黙っていたのでは現状は変らない。怒りの表現は現状に働きかけて、これを変えようとする試みである。
怒りの感情をどう表現するか。
感情という心のエネルギーは、扱い方が難しいし、得体の知れない存在である。何度も言うように、怒りは激しい力を伴うので、怒りの感情についてはその周囲を何度も巡回して、知り得る範囲で“正体”を把握しておくことである。
今回は、次の3つの点に触れていきたい。
1)自分の感情の癖について
2)相手の感情を優先させない
3)怒りを引き起こす、もとになる感情について
自分の感情の癖を知る
怒る人にも、人によって怒り方に特徴がある。
知人のKさん。にこやかで、楽しそうによくしゃべる、40代半ばの男性である。
「Kさんの怒ったところを一度見たいと思うんだけど、怒らないね、あなたっていう人は」
Kさんは「そうですね、カッとなって怒ったりすることはないですね」。
「腹が立つとか、癪にさわるとか、ということはないんですか」
「そりゃありますけどね」
にこにこ顔で言われると、気の短い私なんか、うらやましいと思う。1つ思い当るのは、Kさんが以前、「さっき、呼んで返事をしない店員がいたんですよ」と言った時のことだ。
私が「それで?」と尋ねると、Kさんは「それで、『聞こえた?』って質問したら、『ええ、聞こえました』なんて、平気で答えるんですよ」と言う。
「そこでキミは笑顔で『だったら返事してほしかったね』って言ったのか」
「あれ、聞いてたんですか」
そうか。これが彼の怒り方なんだと、私は思い当たったのだ。彼と一緒にいると、〈何とかならないの、その態度〉と相手に抱く不快感を飲み込まずに、その場で軽く、口にする。怒りの感情を大きくならないうちに、冗談のような口調で言ってしまえる人なのだろう。
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