小田嶋:そういえばアツシじゃないけど、俺も一度、栄養失調で入院したことがあるの。
やっぱり。
小田嶋:大学に入って1年目に若干うつ状態ではあったんだけど、うつ状態なのにすごくノルマがきつかったんですよ。
岡:ノルマって何だよ。
小田嶋:教習所に行って。
岡:ノルマっていうか、自分で望んでいるんじゃないか。
小田嶋:望んじゃったんだけど。前期試験があってとかですごく忙しいのに、教習所の仮免がどうのこうのという時期で、大学に行って教習所に行って、何とかって、ほとんど飯を食う暇がなかったわけ。
岡:いや、お前が行ってたのは、大学と教習所だけじゃないか、聞いてみると。

小田嶋:そうなんだけど、それがもう耐えられないぐらい忙しくて、5日間ぐらいで2食しか食べてなかった。そうしたら、じきに食べても吐くようになっちゃったの。胃が受け付けなくなって。で、あまりお腹が痛いからって医者に行ったら、お医者さんが舌を見るなり、ああ、脱水症状が出てますね、これは緊急入院しなきゃだめです、になって。それで丸3日かな、入院して点滴を打たれて出てきたんだけど。
岡:3人のうち2人が栄養失調を経験しているというのは、すごい確率だな。
アツシさんはどうして栄養失調になったんですか。
小田嶋:リアルに金がなかったわけじゃないでしょう。
アツシ:当時1人暮らしで、イラストを描いて食っていたのかな。僕、質素な暮らしだったので、ポスターを1枚描けば3カ月ぐらい食っていけてまして。
災害後、みたいな暮らし向きですね。
アツシ:だから何というか、面倒くさいんですね、食べるのが。
小田嶋:そうそう。もちろん食べ物がないとか、そういう話じゃないんだよね。やっぱり精神のバランスが悪いんですよ。摂食障害って、過食症になったり拒食症になったりは、女の子によくあるでしょう。
小田嶋さんは精神のバランスが悪かったんですか。
小田嶋:ちょっと悪かったですよ。若干、女学生でしたよね。
アツシ:僕が知っている限り、小田嶋さんはずっと精神のバランスが悪いよ。
小田嶋:まあ、中でも大学に入った年が一番やばかったかもしれないよ。その前の高校3年間、全然勉強ができてなくて、世の中を捨てたようなことを言ってたでしょう。その後、浪人して、ものすごい勉強をして入ったでしょう。勉強して入ったことのプレッシャーもさることながら、
岡:しかも勉強しているのを人に見せちゃいけないんだから。
小田嶋:そう、見せちゃいけないでしょう。
面倒くさいみなさんですね。
とてもいろいろと面倒なぼくら
小田嶋:面倒くさいですよ。だから、大学に入った瞬間に、そういう自己疑問みたいなものが噴出した形ですよね。
アツシ:そんなに勉強していたのかな。
小田嶋:いや、正直に言うけど、勉強しないと入れないでしょう。

アツシ:兄貴なんて真夜中まで遊んで、じゃあ、終電がなくなるからと言って小田嶋さんが帰ると、徹夜で勉強するんだよね。風呂に入っている間も、僕に英単語の日本語を言わせて英語で答えるとか、そういうふうにしてた。そんなことさせるんだったら、マージャンするなよ、と言いたかったんだけど。
小田嶋:それはしょうがないんだよ。
本末が転倒しているような気もしますが。
小田嶋:でも、岡は東大、京大に入ってもおかしくなかった。
岡:京大は惜しかったんだよね。でも11月ごろだっけ。すごくいい点が出て、そこからはしゃぎ始めたのが失敗だった。要するに代ゼミの全国模試で京大合格率が70%と出ちゃって、もう俺、受かったな、と。
小田嶋:わざわざ赤羽まで見せに来たもんね。
岡:見せに行った、見せに行った。それから遊んじゃったんだよな。
小田嶋:俺、そこから勉強したように思うな。
岡:お前はね。
じゃあ、何となく支え合って、助け合って。
小田嶋:意図せずに。
岡:結果的に。ともかく勉強していることを悟られちゃまずかったんだよ。結構していたんだけどさ。
アツシ:だって異様な密度で勉強していたでしょう、小田嶋さんがいなくなると。普通に勉強している5倍ぐらいで勉強しているんだよね。
(この辺のお話は「夢」と「離婚」と「セカンドライフ」とでもお読みになれます。抱腹絶倒)
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