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※この記事は日経ビジネスオンラインに、2011年1月14日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

 英米人は誉め言葉の中に微妙に本音をにじませて伝えます。この方法を体得することは彼らと対等にやり合うのに不可欠です。しかし、最初はなかなかできません。第1ステップとして、英米人流の誉め方を学びましょう。これはgoodさえ使えれば、誰でもすぐにできるようになります。

英米人は建前の世界

 日本人は本音を言わない、英米人は単刀直入に話す、と言われています。この指摘は外国人がしたものです。日本人がこう思うはずはありません。こちらは外国人が話すちんぷんかんぷんな英語を聞かされるわけですから、「ああ、外人って単刀直入だなあ」と思うことはないからです。

 この「日本人は本音を言わない、英米人は単刀直入に話す」という指摘は正しいでしょうか。われわれは検証することもなく、この指摘を真に受けていないでしょうか。ぼくの経験では真実はこの逆です。日本人は本音をよく言います。

 例えば、顔馴染みの寿司屋に入って、「久しぶり。元気でした?」と聞くと、店主は「元気。元気。元気でしたよ」。と必ず言います。寿司屋は威勢がよくないと務まりません。これは営業文句であり、もちろん本音ではありません。

 ところが、カウンターに座って少し話すと、店主は「実は、先月入院するはめになってさ」。と本音を話し始めます。店には常連とは言えない他の客も居るので、この本音は公開情報になってしまうわけです。

 これに対して、英米人はかなり親しい間でも自分の胸の内を打ち明けることがないようです。

 私がかつて勤めていた会社のアメリカ人同僚から、「転職したいのだけど、ヘッドハンターを紹介してくれないか」と尋ねられたことがありました。米国で働いていたときのことです。ぼくは自分の知っているヘッドハンターを紹介する前に、
「このヘッドハンターは日本人や日本企業向けが強いんだ。君はアメリカ人だから役に立つかなあ?」
 と言いました。すると、同僚は、「ノリ(ぼくのこと)は信頼できるからこういう話をするけど、誰にでもできる話じゃないから」と言ったのです。

 つまり、他のアメリカ人同僚には話しにくいということでした。転職話を打ち明けてきたアメリカ人同僚とぼくはそれほど親しいという間柄ではありませんでした。彼は日本人同士が親密につきあっているようすを感じとっていて、日本人のぼくになら秘密を打ち明け、相談できるのではと考えたのだと思います。

 事実、海外に住む日本人は「お互いに助け合おう」という気持ちが底流にあって、誰とでもすぐに打ち解ける傾向があります。また、海外旅行をする日本人は詐欺のカモになりやすいと言われるのも、相手を信頼しやすいからです。腹の探り合いをするのは日本人よりも欧米人の方です。

誉めまくりが横行する欧米の職場

 会社で働いている人ならば、上司が部下を呼んで仕事の評価をする機会が年に1~2回あります。そんなとき英米人の上司は良いことしか言いません。「がんばってるね。私だけでなく周りのみなが評価しているよ」といった具合です。

 ただ、途中でちょっとだけ本音を出します。営業成績が低迷している人には、「今年の営業成績だけど、もう少しいけたはずだよね」と軽く言います。そして、その後にすぐ、「これがあなたの本来の力でないことは知っている。景気が悪かったのが最大の要因だよ」とフォローを忘れません。

 このように言われたらアメリカ人の部下は「上司からまずまずの評価を受けた」とは受け止めません。本音を見せない風土に慣れている人たちは「相当厳しいことを言われた」と思うはずです。